第207話
ジャンロードとエンヴィーは強かった。
二人で残ったコボルトの半数以上を討伐する。
リゼも多く討伐したが二人には敵わなかった。
そして……コボルトを全滅させることに成功する。
ただし、ここまで馬車を運転してくれた人は犠牲となってしまった。
同時に馬車も破壊されてしまう。
「ありがとうございました」
間一髪助かった商人がリゼたちに駆け寄る。
「助けた謝礼は貰えるのか?」
ジャンロードはすぐに交渉に入る。
リゼとエンヴィーは驚くが、冒険者としては当然の権利だ。
「そうですね……銀貨五枚でどうでしょうか?」
「へぇ~、お前さんの命は銀貨五枚ってことかい?」
ジャンロードの言葉に商人の顔が引きつる。
「金貨一枚……いいえ、白金貨一枚と、運搬している荷物からお好きなものを持って行ってもらって構いません。もちろん、バビロニアまで荷馬車ですが送らさせていただきます」
ジャンロードの気迫に押されたのか、商人が訂正と追加報酬を口にするとジャンロードは状況を確認するかのように周囲を見渡した。
商人の荷馬車は横転しているだけで、大きな損傷はしていないようだ。
二頭いた馬も一匹は殺されたが、一匹は無事だった。
リゼたちを運んでくれていた馬も同様に一匹だけ生きているので、商人の荷馬車に繋げば運航に支障はない。
「それはアイテムバッグの中身も含めてだよな」
「……はい」
「必ず全て出せよ」
「もちろんでございます」
「俺は目を見れば嘘をついているか分かるからな」
ジャンロードは商人に脅すかのように睨んだ。
「もし、気に入る商品がなかったらどうするのよ」
「そ、その時は追加で白金貨一枚でいかがでしょうか?」
「それでいいわ。ということで、私は白金貨二枚ね。もちろん、バビロニアまでの食事も負担してくれるわよね。命の恩人なんだから」
「は、はい」
エンヴィーも柔らかい口調だが、ジャンロードに負けない交渉術で対抗していた。
ただ見ているしかないリゼだったが、商人が気の毒に思えた。
しかし、冒険者としては当然のことなのだろうと、ジャンロードとエンヴィーの言動も理解出来る。
バビロニアで生活するうえで騙されないように、二人のように上手く交渉できるようにならなければとも思っていた。
「俺は荷馬車を起こす。リゼとかいったっけ? お前は散乱している荷物を片付けてくれるか?」
「はい、分かりました」
「私はコボルトの魔核でも取っているわ。分け前は均等でいいわよね?」
「あぁ、構わない」
「えっ、私は二人ほど倒していませんので、そんなに頂けません」
「構わないぞ。コボルトの魔核なんて、たいした額じゃない。ないよりマシってだけだ」
「そうそう。それに冒険者ギルドへの報告も必要だしね。同乗していた冒険者や、商人の護衛たちのプレートも回収して届けないとね」
「……はい」
二人の勢いに押されるようにリゼは返事をする。
ジャンロードと商人が荷馬車を起こすと、ジャンロードは馬を荷馬車に繋ごうとする。
「……駄目だな」
大人しくしていた馬だったが左後足に怪我を負っていた。
コボルトに攻撃されたようだ。
ジャンロードは馬の首に手を回して頭を優しく撫でる。
「悪いな」
呟くと同時に馬の首をへし折る。
馬の断末魔が響き渡る。
一部始終を見ていたリゼは驚き、ジャンロードと視線が合う。。
「歩けない馬は激痛に耐えながら死ぬのを待つだけだ。それなら、早く殺してやるのが優しさだろう?」
リゼの目をまっすぐに見つめて話すジャンロードの言葉に嘘はなかった。
「すみませんでした」
自分の無知さを……考えをジャンロードに押し付けたと思い、リゼは即座に謝罪した。
ジャンロードは気分を害することなく、リゼの謝罪を受け入れる。
散乱した荷物を荷馬車の近くに集め終えたリゼは、エンヴィーを手伝いコボルトから魔核を取り出して、道の端に積んでいった。
コボルトの死体に魔物が寄ってくるのではないか? と思い、エンヴィーに質問をするが、コボルトは危険だと思うと暫くは同じ場所で襲撃はしないそうで、コボルトの死体は他の魔物よりも腐敗が早いので、死体に群がるのは蠅くらいだと笑っていた。
大まかな作業が終了したので報酬の話へと移る。
商人はアイテムバッグから幾つかの商品を出して、散乱していた商品とは別に並べた。
当然だが、アイテムバッグに収納していた物のほうが価値は高い。
ジャンロードは並べられた商品から、ひときわ輝く宝石を選んだ。
商人の表情が明らかに変わったので、かなり高額な物だと確信したジャンロードは口角を上げる。
リゼも選ぼうと商品を見てみるが、何が良いのか分からないでいた。
ジャンロードのようにアイテムバッグから選ぼうとも思ったが、宝石の部類だと交渉が上手くないと買い叩かれる。
リゼの不得意とする分野なので、エンヴィーのように金貨にしようと考えていると片付けの際に気になった物があることを思い出す。
手のひらより大きい魔物の爪だが、片付けをしている際に手に取ると爪の周りが薄っすらと光った気がしたのだ。
不思議な現象だったし、他の爪を幾つも触ったが光らなかったので強く印象に残っていた。
「これでもいいですか?」
リゼは気になった爪を手に取ると商人は驚いていた。
「そんなものでいいのかい? ただのサンドリザードの爪だよ」
「はい、構いません」
「おいおい、お前正気か⁈」
「はい、これで構いません」
市場で木箱に乱雑に詰められた状態で、幾つも出回っている爪を選んだリゼにジャンロードも止めに入る。
リゼの手にあるサンドリザードの爪を見て笑うジャンロードと、それを不機嫌そうに見つめるエンヴィーだった。
その後、コボルトから採取した魔核の分配も終えるとバビロニアへと出発する。
馬が一頭なので負担を減らすため、リゼたちはそれぞれ荷物を自分のアイテムバッグにしまう。
それでも馬が荷馬車を引いて進む速さは、かなり遅かった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十三』(一増加)
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十六』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・
・報酬:転職ステータス値向上
■サブクエスト
・防具の変更。期限:二年
・報酬:ドヴォルグ国での武器製作率向上
・バビロニアの骨董市で骨董品の購入。期限:一年
・報酬:観察眼強化
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます