二十七歳の恋(後編)

林 風

第1話

二十七歳の恋


どうして?

そのひと言が言えない。その人は誰?いつから知り合いだったの?どんな人なの?聞きたいことは山ほどある。でも、その前に「どうして?」と、それをたずねたかった。

そのひと言を消すかのように、二人は駅のホームへ入っていった。

これからどうしようか?どこへ行けばいいのか?そんなことはわかっている。ただ家に帰って、いままでと同じように、ご飯を食べて、小説を書いて、仕事へ向かうだけだ。でも、そんなことよりも、もっと重要なことがある。彼女にどうして?とたずねることだ。でも、彼女はもう、自分の知らない人になってしまった。手の届かないところへ行ってしまった。さようなら、の言葉の方が、あっているのかもしれない。でも、さようなら、よりも、どうして?と、ひと言、その言葉を問いかけてみたかった。

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