先輩、好きです!

織山青沙

第1話 失恋

 ジメジメとした梅雨が明けた7月中旬。


 学校へ向かう2人は並んで歩いていた。



「美結、昨日どうだった?」



 セーラー服を身にまとったポニーテールの女子生徒は問いかける。


 彼女の名は栗山朱里クリヤマ アカリ



「ダメだった……」



 三つ編みおさげの女子生徒は肩を落とし愕然としていた。


 彼女は、福島美結フクシマミユ



「嘘……っ! 絶対、美結のこと好きだと思ったのに……」

「私の前に違う人が告白してて……湊先輩、誰とも付き合う気はないって」

「そっか。告白する前に聞いちゃうのは辛いね」



 朱里は悲しげに眉を落とした。



「うん。付き合う気ないなら振られたようなもんだし」

「美結……。よし、今日の放課後カラオケ行こう!」

「うん。朱里ありがとう」



 元気付けようとしてくれる朱里に美結は笑みを浮かべた。



 ***



 ──昨日。


 美結と朱里は並んで学校へ向かっていた。


 朱里は思い出したかのように口を開く。



「あ、今日言うんだっけ?」

「うん! 放課後ね」

「頑張ってね」

「どうしよう……今から緊張するよ」



 美結は胸に手を当てた。



「先輩も美結と同じ気持ちだと思うよ。噂だと女の子と基本喋らないみたいだし」



 ──高木湊タカギ ミナト


 美結達の1つ上の高校生3年生。


 バスケ部の部長で背も高い。


 そして、切れ長の目からは想像もつかない優しく甘い声をしている。


 湊は女子生徒の間で人気だが、女子と話している姿はあまり見られない。



「私、先輩とよく喋ってるし放課後一緒に帰ったりするし……頑張ろ!」



 美結は湊がいるバスケ部のマネージャー。

 他にもマネージャーはいるが笑顔を見せるのは美結だけ。



「うん! 頑張れ!」

「朱里ありがとう! もしダメだったら慰めてね」

「分かった! その時はカラオケ行っていっぱい歌おう!」

「うん!」



 話している間に学校に到着した。



 ***



 ──そして、放課後。


 テスト期間中の為、部活はなかった。


 校舎裏には2人の男女がいた。


「す、好きです……! つ、付き合ってくださいっ!」



 頬を真っ赤に染めた女子生徒が声を震わせた。


 胸元まで伸ばされた髪がバサッとなるほど思いっきり頭を下げる。


「ありがとう。……俺、誰とも付き合うつもりないんだ。ごめんね」



 悲しげな顔を浮かべた、背の高い男子生徒。

 黒髪は短くカットされ、切れ長の目をしているがとても優しい声色だ。


「あ……分かりました。来てくれてありがとうございます」



 顔を上げた女子生徒は瞳に涙を浮かべ、精一杯の笑顔を見せるとその場から立ち去った。


 男子生徒は女子生徒が見えなくなるとその場を後にした。



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