育てさせてもらってる
『親は子供を『育ててやってる』んじゃない。『育てさせてもらってる』んだ。なにしろ、子供を生むのは自分の勝手だから。親の都合で子供をこの世に送り出すんだから。
命を生み出しておきながらそれに対して責任を持とうとしない親が多いから……
自分の所有物のように考え、自分の所属物のように考え、自分の好きにして構わないと考える親が多いから……
だから『生んでくれなんて頼んでない!』と子供が考えてしまうんだ。
当然だ。所有物や所属物として好きにされることを望んで生まれてくる者なんていない。
わざわざ苦しみや痛みを与えるなんて、なんて愚かな……
子供に、『苦しみや痛みや悲しみしかないこんな世の中に生まれてきたくなかった』とか思わせるなんて、愚かの極みだよ……
人間も吸血鬼も、どうしてそんな当たり前のことに気付かなかったんだろう……
僕達吸血鬼は、幸い、それに気付くことができた。だからダンピールを生み、苦しめたりしないように考えられる者が多かった。
それでも、中には子供をただの実験材料のように考える吸血鬼も、最近までいた。
その吸血鬼は、
ただ、それまでの間に、たくさんの無関係な人間まで巻き込まれ、傷付いた人、命を落とした人も出た。
ダンピールによる吸血鬼への復讐の巻き添えになったんだ……
僕はそれが悲しい……
復讐のためなら『多少の犠牲もやむなし』と考えたダンピールにも問題はあったけれど、そもそもそこまで恨まなければいけない原因を作った吸血鬼こそが責められるべきだと僕も思う。
そんな愚かな真似をしたことこそが非難されるべきなんだ。
そうすることが<常識>だと思い上がってね。
だから僕達は、先達らの過ちを次の世代には引き継がない。
その実例が、今まさに僕の目の前にあるんだ。
なら、僕も全身全霊をもってこの実例を守りたい。これこそを次の世代に引き継ぎたい。
それが僕の覚悟だ……』
ミハエル、
ダンピールでさえ、吸血鬼を恨まずにいられる。
『ダンピールは魂の奥底から吸血鬼を憎むもの』
と信じられてきた常識が嘘だったと証明された。
『かつてはその常識に囚われて、結果としてそうなるように、型にはまるように動いてしまっていただけなんだ。
遺伝子は、<人格>までは作らない。<生まれつきの性格>は、ごくごく単純な<何となくの傾向>までしか影響を及ぼさない。それを正しく理解することが、正しくない常識を打ち破る方法なんだ……』
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