リビング
「ほわほわ~♡」
家族揃って桜色に染まって、まさにほわほわに緩んだ様子でお風呂から上がった。
「はにゃ~♡」
「うにゅ~♡」
「にゃひ~♡」
蒼井家には、基本、<自室>というものがなかった。アオの仕事部屋はあるものの、他には寝室しかない。なにしろ普段はリビングで集まって過ごすのだから。
一応、アオの仕事部屋の一部やリビングの一部を区切って<子供部屋>を作った時期もあったけれど、子供達の誰もそこにこもったりしなかった。なんだかんだと皆、リビングに集まってしまう。そこで家族全員で過ごす。
アオですら、仕事に特に集中する時には仕事部屋にこもるものの、それ以外は、リビングにノートパソコンを持ち込んで仕事をしている。
それが一番リラックスできるからだ。
今も、リビングに全員集まって、録画していた深夜アニメを一緒に視る。
コメディ調のアニメが好きなのは共通で、その上で、悠里はホラーやアクション物、安和は学園物やサスペンス物、椿はシュールギャグ系が好きだった。
けれど、基本的にどのジャンルのアニメでも楽しむことができる。
アニメの出来が悪くても、
「なんでそうなるの~」
「いや、おかしいでしょ!」
「別人じゃ~ん」
などと笑いながらツッコミを入れつつ楽しめた。これは、母親であるアオの楽しみ方そのものだった。そういう楽しみ方すらできないものはただスルーする。自分の好みに合わないものは視ない。面白いと思えないものを視るのに時間を費やすほど暇じゃない。
何より、
『他人が作る創作物のすべてが自分の好みに合わせて作られるなどということは有り得ない』
ことを知っているから。
それでなくても毎シーズン、チェックしきれないほどのアニメが作られるのだから、好みに合わないものにケチをつけて時間を無駄にしていたくないというのがあった。
また、悠里は、アオの書くラノベは好みじゃなかった。とにかく惚れた腫れたがメインの恋愛コメディには興味がなかった。
けれど、だからといって母親の仕事を馬鹿にしたりもしない。そういうのが好きな人もいて、作家<蒼井霧雨>の作品を待ち望んでる人もいるのだということはちゃんと理解できていた。
それもこれも、ミハエルとアオが子供達の存在を全面的に受け入れてるからだろう。自分のことが認められてるから、承認欲求が十分に満たされてるから、いちいち他人の好みにケチをつける必要がないのだと思われる。
『自分は自分。他人は他人』
相手が実の母親でも、自分とは別の人間なのだというのが悠里には分かっていたのだった。
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