自宅マンションにて(2)
何も考えないようにしながら部屋着にしているワンピースを着て、何も考えないようにしながら松田の部屋に向かった。インターホンを押す。すぐに扉が開いて出てきた腕に引きずり込まれる。
小柄な由香奈の体をほとんど吊り上げるようにしながら松田はキスをしてきた。足元のサンダルが滑り落ちる。
そのまま唇を重ねて押しやられるようにしながら短い廊下の先のリビングまで、由香奈は後ずさりした。
ラグの端がかかとにひっかかる。転びそうになってひやりとする。束の間、背中と膝裏を抱き上げられた感覚、直後にはテレビの前に押し倒されていた。カーテンを閉じた室内をテレビ画面の鈍い光が照らしている。
とっくに侵入していた舌がさらに深く由香奈の舌に絡みつく。彼と同じように息を乱しながら由香奈は涙がにじんだ瞳で、ニュース番組の女性キャスターの賢そうな顔を見上げた。音量は落とされていて、何を話しているかはよく聞き取れない。執拗なキスでもう頭がぼんやりしている。
ワンピースの長い裾をたくし上げて足を露わにされる。なんのためらいもなく男の手が下着の中に入ってくる。けれどその指は、急にいたわるような手つきでそうっと由香奈の柔肌をなぞる。
いちばん初めに乱暴にされたとき、由香奈は本気で苦痛の悲鳴を上げてしまった。それから松田は最初の愛撫は妙な優しさでもって時間をかける。最終的にすることは同じなのに。
(気持ちいい……)
ふわりと浮き立つような感覚と同時に、由香奈は涙を零していた。
松田は由香奈の足から下着を引き抜く。膝の間に体を割り込ませながらワンピースの裾を持ち上げて下着ごと一気に剝ぎ取る。華奢な由香奈のからだにはそぐわない大きな乳房が揺れる。
やはりシャワーを使ったのであろう彼の髪が湿っていることに由香奈は今頃気がつく。まぬけだ。
乳首を強くつままれたり吸われたりするのは痛いから嫌いだ。そのことも松田はもう知っているから痛くはしない。この男は、由香奈がそうと思う乱暴なことは基本的にはしない。
吐息をかみ殺しながら由香奈は気を逸らすようにテレビの画面を見上げる。いつの間にかニュースが終わってバラエティー番組が始まっている。ドラマ仕立てのクイズの出題。答えは……。
何度となく嬌声を発しながら由香奈は思わず腰を浮かせる。だけど気持ちは妙に冷静になっていた。
松田とのこれまでの行為を思い返す。彼はいつもこうだ。始めは落ち着いてはいても最後には激しく攻め立てる。当然だ。溜まり溜まったものを出したくて、由香奈を呼ぶのだろうから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます