第40話 女神様と朝の過ごし方

 穂香と過ごす二回目のクリスマスの朝。さすがに去年みたいなことにはならないように、色々と自重した。そう、色々と。

 俺が寝転んでる横には、寄り添うように眠る裸の女神様。この光景も見慣れたものだと言えばそうなのだが、何度見ても飽きることはないと言える。

 すぅすぅと可愛い寝息をたてながら眠る表情は、起きているときより幾分か幼く見える。正直言って、いくらでも見ていられる。

 俺の左腕は、抱き枕のようにがっちりと抱えられているので動かせない。色々と柔らかい感触が直に伝わってくるので、動かす気もなく堪能している状態だ。

 自由に動かせる右手で眠り姫の頬をつついたり、頭を撫でたりしてみるが起きる気配がない。そこで、そのまま背中を触れるか触れないかギリギリのタッチで触ってみる。


「……う…………ん……」


 起きたか?と思ったが、まだ起きてないようだ。こうなると、どこまでやっても大丈夫かやってみたくなる。そういった好奇心は常に持ち続けているつもりだ。

 もう一度同じように、背中を絶妙なタッチで撫でてみた。撫でる範囲は、より広くしている。


「……んん…………んっ……」


 先ほどより反応が大きかったが、まだ起きていないようだ。ちょっとした悪戯は、バレるかバレないかドキドキする。もし、これをやってるときに気付かれたら、頬をぷくっと膨らませてちょっと機嫌が悪くなるくらいか。どちらにせよ、俺には損はない。

 そういう姿も可愛いから見てみたい気もするが、今回はいいだろう。わざわざクリスマスの朝に、少しでも機嫌を損ねるのはちょっと……な。

 そんな風に考えると、できる事はいつも通り頭を撫でるとか、そんな事ばかりになるのだが。

 そうだな、たまにはじっと寝顔を見つめるのもいいか。早速実行してみよう。

 改めて至近距離から穂香の寝顔を観察してみる……う~ん、一言で言うと、やっぱり寝ていても美人だ。寝転んでいて顔は横向きだから、髪の毛は乱れているし、頬も片方は枕に埋まっているようになっているが、それでも穂香の可愛さは損なわれない。それは惚れた分の補正がかかっているのかもしれないが、客観的に見てもそんなに差があるものではないと思っている。

 

「……ん…………ん?」


 どうやら目を覚ましたようだ。眠そうに目をこすって、何度か瞬きするとゆっくり口を開いた。


「おはよ、ユウ君……何してるの?」

「おはよう。特に何もしていないぞ……ずっと見ていただけだ」

「……もしかして……寝顔見てた?」


 俺は少し微笑んでコクンと頷くと、それに合わせて、穂香が目を伏せて頬を赤く染めた。寝顔を見られるのが恥ずかしいのは知っていて、わざとやっているのだ。これに関しては怒られることもない。


「もう……恥ずかしいからダメって……いつも言ってるのに……」


 そう言うも嫌がっているわけではないのも知っている。俺はいつも通り、穂香に顔を接近させると、そのまま唇を奪った。寝起きであっても瑞々しいそれは、甘美な果実のようでもある。穂香が俺の頭に手をまわしてきて、その力が強くなってくる。

 どれくらいの時間かわからないが、お互いにたっぷり味わった後、ゆっくりと顔を離す。


「えへへ……幸せ……大好き」


 そう言って笑顔で抱き着いてきた。今日も穂香の機嫌は良いようだ。

 お互い裸なので、抱き着かれると体温と柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。


「ふふふっ……ユウ君の身体、あったかい……」

「穂香も同じだ……あったかいな……」


 抱き合ったまま、何かするというわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていく。休みの日など、朝ゆっくりできるときは、こんな感じで過ごす日も多かった。

 こういう時間はどれだけ過ごしても飽きることがない。ゆっくりたっぷりとお互いの成分を補給して、やっとのことで俺達は布団から出ることにした。


「とりあえずシャワー浴びよっか……」

「ああ、そうだな」


 家の中には俺達しかいないが、穂香はバスタオルを身体に巻いていた。たとえ一人でいたとしても、裸でうろうろするのは恥ずかしいとのことだ。

 適度な恥じらいを持っていてくれる方が俺としてもいい。穂香が全く恥ずかしがらなくなってしまったら、俺は間違いなくショックを受けるだろう。そんな気がする。

 俺はそのまま穂香についていったのだが、当然何も身につけていない。そんな俺を振り返って、上から下まで見て固まった。


「……穂香?どうかしたか?」

「……あの……なんでそんなに元気なの?」

「ん?ああ……まぁ、朝だしな……」


 なんというか、朝の生理現象は仕方ない。起きてから結構時間たっているじゃないかと言われればそうなのだが、裸でくっついていたのだから仕方ないと思う。

 逆に穂香とあの状態で過ごしていて、何も反応しないのは男として終わってる気もする。


「……朝って……起きてから結構時間たってるよ?」

「……いや、さっきまでくっついてたからな……まぁ、なんかすまん……」

「……ユウ君のえっち……私でそうなってくれるのは嬉しいけど……でも、夜までお預けだからね」


 それだけ言うと、少し顔を赤く染めて、穂香は風呂の方へ行ってしまった。

 まあ、こういう事で、言い訳とかする必要もない間柄だからな。正直が一番だと思う。

 

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