第16話 テスト結果

 週明け、テスト結果が発表される日が来た。


 遊園地以降、穂香との関係はというと、大きくは変化していない。以前よりも遠慮なくくっついてくるようになったくらいか。俺たちは俺たちの速度で仲良くなっていけばいい。焦って急ぐ必要もないのだ。


「よ~し、全員いるな。順番にテスト返していくから、呼ばれた者から取りに来るように」


 担任の先生がやってきた。俺たちのクラスの担任は、ぶっきらぼうな印象があるが、実は結構面倒見がいいと言われていて、結構人気があったりする。ちなみに37歳独身だ。


 この学校は、定期考査のテストは全科目まとめて担任が返却してくれる。まとめて封筒に入れて、順位が貼り出される30位までは順位が書いた紙も入っている。今回のテストは全部で800点満点だ。

 浩介がテスト返却してもらって席に戻ってきた。なんかニヤニヤしていて気持ち悪いぞ。


「浩介、点数悪くて壊れたのか?」

「おお、親友、お前のおかげだ。過去最高で初めて平均点超えたぜ。これでナツに怒られなくてすむ」


 普段から勉強していたら追い込まなくてすむのにな。


「次、相沢優希」


 お、俺の番だ。


「惜しかったな。もう少しだ。次も頑張れよ」

「あ、はい」


 どういう意味だ?前より下がってるのか?10位だったから一桁までもう少しということだろうか?

 恐る恐る封筒を開けて、中身を取り出す。合計点数771点、2位という紙が入っていた。

 惜しかったというのは、もう少しで1位だったということか……穂香との普段の勉強がこれほど効果的だったとは。

 この学校のテストは、どの科目もレベルが上の進学校での難問クラスの問題が1~2問、出題されている。そのため、90点以上の割合が少なく、前回は10位で700点を切るくらいだったはずだ。

 難問をポンポン解けたのは穂香のおかげだが、これはやっちまった感がある。


「おい、親友、どうだった?」

「昼にはバレるけど、声出すなよ?」


 そう言って、浩介にだけ見えるように紙を取り出す。


「おおおおおお!マジか!これはあれか?愛のパワーってやつか?」


 浩介が小声で言ってきた。


「その言葉通りではないが、普段の成果が出たのは確かだ」

「おー言うじゃねえか。ま、続きは昼休みな」



 昼休み。

 いつも通り菜摘がやってきた。浩介の結果を知っているのか、いつもより表情が柔らかい感じがする。


「優希さん、ありがとうございました。おかげさまで、浩介さんが死地へ赴かずに済みました。ただ、次回以降も取れないとマズイので、またお願いするかもしれません」

「ありゃ、そうなのか、浩介?」

「ああ、今回くらいを維持したら大丈夫だと思うけど、親父次第だな」

「なるほどな、まぁ、俺は構わないが……」

「あちらには私が伝えておきます」


 菜摘が俺の視線に気付いて、伏せて言ってくれた。

 この前の遊園地はこの二人以外には目撃者がいなかったのか、学校では全く噂になってないらしい。


「そういえば、テストの順位が貼り出されてますけど、優希さん、惜しかったですね。もう少しです」

「いや、順位で惜しくても、中身では遠いだろ?」

「この学校の意地悪問題が悪いのです。あれのせいで、いつも2位から20位くらいが団子状態になっているのです。2位で平均点90点いかないとか鬼畜なのです。ちなみに今回の3位は719点らしいです」


 たしかにいつもそんな感じだったな。菜摘も1位の穂香との差があるのをわかってて、惜しいと言っているのだ。こいつの方が鬼畜な気がする。


「へぇ~、そうなのか。ナツ、それなら優希の点数は聞かない方がいいぜ」

「そうなのですか?730点くらいあったりしましたか?」


 そう言った菜摘に合計点数と順位が書かれた紙を見せた。

 すると「え?」という感じで口を開けたまま固まった。


「……ここにも人外がいましたか……」


 菜摘が遠い目をして言った。



 

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