取り替え子/大江健三郎
大江作品にしては読みやすいが、それでも著者の言うところの「自己言及癖」がハードルを上げている。実在の人物をモデルに、義兄・伊丹十三の自殺を題材にしている。そのため現実と虚構が入り混じり、不思議な感覚に陥る。これを私は読み難いと感じたが、「小説で起こる出来事は、小説の中において全て現実」と考えるなら、現実と虚構の交錯に翻弄される私の読み方こそが悪いとも言える。また著者の思想はいわゆる「戦後民主主義」に立脚しており、作中にも政治的思想が伺える箇所が多くある。その点も、読み難さを増しているのではないかと感じた。
◇蛇足
しまった。読み難さに対する感想だけで、テーマへの言及がなかった(汗)
いろいろと思うところの多い本作であるが、最終章は興味深く読んだ。この章は突然、主人公「古義人」ではなく、古義人の妻であり吾良の妹である「千樫」の視点で語られ、表題である「取替え子」の意味も明かされる。取って付けた感は否めないが、大切な人の自殺を題材とした鬱々とした物語を、再生と希望の結末に導く手腕は流石だと感じた。
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