なぜ人を殺してはいけないのか―新しい倫理学のために/小浜逸郎

倫理学が哲学の範疇であるならば、本書も哲学的に読み下さなければ理解に遠い。哲学とは命題に意味はなく思考の過程こそが全てらしいが、同様に本書の答にも意味はなくそこへ至る思考の過程こそが重要なのだろう。つまり答のみ求めても得るものはなく、はぐらかされた印象だけが残るのではないだろうか。表題の問いの他に、売春は悪か、自殺は許されない行為かなど、十の問いが用意され各々で思考が展開されるが、個と他者(ひいては社会)との関係性というテーマで底通しているようだ。読み進むほどに、共に自らの思考も広がっていくのが心地よい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る