◆Ⅴ

 少女をもとの場所に送り返してから、彼はため息を吐いた。

 またしても本当のことを言えなかった。


 ここに来てもう10年以上になる。さっき少女は高三になったと言っていたから、正確には13年目だ。その間、一度ももとの世界に帰っていない。


 こんなに長い間だらだらといつづけるつもりはなかった。それが、あと1日、もう1日だけとやっているうちに13年。ここは朝と夜のサイクルはあるが季節は夏で止まっているので、年月を感じることはあまりない。そもそも向こうとは時間の流れが違っているらしく、彼が数日経ったと思えば少女の周りでは数か月が経過していたというようなこともあった。


 少女がここを訪れるたびに少しずつ大人に近づいているのを見ると、言いようのない焦りを感じた。

 彼の時間があの夏で止まっている一方で、彼女は現実の実りある人生を歩んでいるのだ。


 ここらが潮時かもしれないと彼は思った。

 次に彼女に会ったときは、何があったかちゃんと伝えよう。


 彼がそう心に決めたとき、夜空をつーっとまた星が流れた。

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