飴と夏。
とろりと光る提灯に照らされる妖艶な少女はこちらを見て笑う。
私には初めて恋人ができた。
そして初めての夏。
初めてのお祭り。
お祭りの日、暗くなってから家を出るのは何だか気分が高揚する。
普段は明かりの無い公園内も今日は提灯と屋台で薄暗く照らされる。
「ねえ、人のいない所にいこう」
私は彼女の予想外の言葉に期待と恥じらいを感じ赤面してしまう。
彼女の柔らかい手は私の手を掴み森の奥、見晴らしのいい開けた丘へと連れて行く。
ドク
ドク
ドク
心臓が激しく動いているのを悟られないようにと必死に普段通りを演じる。
少しの疑問がある事を隠しつつ。
街を一望できる丘へ着いた頃、月明かりだけの空間は妙に明るく感じられた。
街の光はゆらゆらと輝きまるで水飴のように見えた。
彼女は私の長い髪を束ねる。
「こっちの方が、可愛いよ」
「ありがと」
彼女の美しい笑顔に私は疑問を解決しようと決めた。
女の子の私が本当に彼女が好きなのだろうか、と。
好きと言う気持ちはあるのにどうしても自分の中の疑問は消えない。
疑問を消すために私は彼女を生きたまま解体した。
彼女の声は最期まで甘く魅力的だった。
彼女の骨も肉の欠片の全てが愛おしく可愛く美しく感じた。
彼女は最期、こんなことを私に言ってくれた。
「愛してるよ」
甘い甘い、飴のような吐息と一緒に…
彼女を集め、抱きしめ、幸せに満たされた私の吐息は彼女を撫でた。
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