第16話
レイラとともに向かったお客様との食事を楽しむための専用の食堂。すでに胃が痛い。キリキリと痛み、食事がのどを通るかどうか心配になってくるレベルだ。
「それでは、失礼いたします」
「ええ、また」
レイラは私の専属侍女であって、今回の晩餐会を準備するメンバーには入っていないのでここでお別れだ。一体どうなるかとあまりの緊張に、胃の中で三叉槍もった悪魔が暴れまくってるような気分だ。決意をして、食堂へと入る。
「遅くなってしまい申し訳ございません」
「なに、ただの夕食会だ。かしこまる必要はない」
すでに父も皇太子殿下もそろっていて、談笑しているところだった。もしや私だけ遅い時間を伝えられた?とも思ったがそうであったとしても遅くなったことに変わりはないので、謝罪をして席に着く。
「では、いただこうか」
父のその言葉に食事が運ばれて豪華なものが並ぶ。煌びやかな空間に相応しい料理ではあるが、緊張で心臓が飛び出そうな私には重そうなものばかりだった。
「明日は、道中に気を付けて帰国しなさい」
「ありがたきお言葉、感謝いたします」
緊張と恐怖の晩餐会は無事に終了、たまに話を振られるだけで無理難題を吹っ掛けられるようなことはなかった。父と皇太子殿下と別れて部屋に戻る。後ろからレイラがついてくるのは確認しているので、着替えたらちょっと図書館に行くつもりだと言おう。
「レイラ、着替えはあれにしてくださる?」
「アイリーン様、もうお休みにはなられないのですか?」
「ええ、少し調べたいことがあるの」
「かしこまりました。ですが、一時間だけです。時間になりましたらお呼びしますので、お休みになるようにしてください」
「わかったわ」
レイラはしぶしぶと言った表情で許可をくれたので、私は逸る気持ちを抑えて王城図書館に急いだ。調べることはただ一つ、魔法のみ。
「お供いたします、アイリーン王女殿下」
「感謝します。図書館では一時間ほど調べるつもりです。時間になったら私の侍女が迎えに来ます。図書館内ではできれば一人にしていただきたいのだけれど……」
「……、承知いたしました」
先日の見覚えのある近衛騎士が護衛として側にいるようで、一人にしてほしいと言外に頼めば、渋りはしたが、許可はくれた。私は王城図書館に入り、いつも探している魔法関係の書物のある棚に急ぐ。一通り目は通したがそれは、未来視の関係項目を重点的に、という意味合いが強い。
そうでない内容はさらりと読み流したので、未来視以外で調べるのは、思えば初めてかもしれない。
「っ、ふ、っん」
手を伸ばして高い位置にある本を取り、そのままはしごに腰を掛けてページをめくる。ビンゴだ、私の予想通りの本にその記述はあった。
「じゃあ、あの顔は……魔法で変えたもしくは本来の顔……。本来の顔……、かお……か……、お!」
思い出した、あの顔は……。そうだ、アイリーンが暗殺者を雇ってヒロインを殺そうとするも失敗し、その暗殺者は捕らえられて、最終的にアイリーンに切り捨てられて処刑された暗殺者!アイリーンが暗殺者を雇ったという事実はすでに確認されていたものの、アイリーンはそれを認めなかったし、暗殺者は見せしめの意味も込めて処刑。
あの時のシナリオは心が痛かった……ってそうじゃない!
「ま、って……。それなら、敵……いや、味方……。わかんない……」
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