1-5

 令は迅速に駆けた。爆発の衝撃によるダメージはそう重くなかった。

 あっという間になごみのもとまでたどり着く。

 なごみはガードレールに寄りかかり、不安そうな顔でひとり待っていた。


「どうだった?!」

「戦うぞ、なごみ!」


 令を見つけると心配そうに訊いてきたなごみに、令は間髪入れずにそう返した。

 なごみは少し面喰めんくらいながらも、すぐに「うっ、うん!」と頷く。


 二人で無人の夜の公園に駆け込む。

 敷地の中央辺りで令が足を止めると、なごみもそれに準じて足を止めた。

 令は真剣な眼差しをなごみに送る。

 なごみもそれをくりくりとした瞳でしっかりと受け止めた。


「じゃあ、頼んだぞなごみ」

「りょーかい!」


 令が両腕を広げる。

 次の瞬間、令の胸から、白く光り輝く“かたまり”が抜け出てくる――。それと同時に令は、“令の身体”は、ゆっくりと後ろに倒れていった。それをなごみが受け止める。

 令から抜け出てきたそれは、まさに“人魂ひとだま”と呼ぶのに相応ふさわしい代物しろものだった。

 白く輝く魂の周辺を、突然“風”が渦巻く。

 いや、それは風ではなかった。

 人魂の周辺の物質――ベンチやブランコや土や、様々な物体から“粒子”が飛び、それが渦巻いて魂のそばに集結していた。


 それは徐々に何かを形作る。

 それに連れて周囲の物体――ベンチやブランコや土なども、その形をいった。

 渦がまるで3Dプリンターのように何かを創り出していき、その勢いが苛烈かれつを極めると、一気にふっと渦は消えてなくなってしまった。

 そしてさっきまで渦があった中心には――“人の形”があった。

 それはまるで特撮ヒーローのスーツのような、黒を基調とした姿。

 顔の前面にはバイクヘルメットのダークスモークシールドを思わせるような黒い部分が、矢羽根のような形であった。

 そして矢羽根の窪み――額のところには、中ほどが少し膨らんだラインが斜めに一本入っていた。


 その“特撮スーツ”が、動き出す。

 先ほどまであった“魂”は、今はこの“器”に収まっていた。


「なごみ! ベルトを!」

「りょーかいっ!」


 令の“肉体”を膝まくらさせているなごみは背負っていたリュックをごそごそいじると、中から取り出した二つのボックス付きのベルトを、“器”の姿の令に放り投げる。

 それを受け取った令は素早くベルトを腰に回し、バックルをカチリと留めた。


「よし、行ってくる!」

「令くんっ! がんばれぞいっ!」


 なごみの独特の応援を背に、令は公園を出て、路地を駆けてゆく。

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