第6話:酒場と幼女と冒険者
「こら、ルゥルゥ! 今日のところは留守番してろってさっき行ったよな?」
「はうう……、これ……。タクヤ様がさっき探してた武器かもしれないと思ってですぅ……」
「はっ!! それは、ウェッジダガーじゃないか!? うはは――、探してたんだーこれっ! ……ってどうしてここがわかったんだ!?」
ルゥルゥは先端が楔の形状をした特殊なナイフを布袋に入れて持ってきたので、中身をジャラジャラと確認したタクヤは安堵の表情を浮かべたが、あまりにも突然だったため驚きの顔に変化した。
一方のルゥルゥはしゅんとした表情に変化する。
「る、留守番って、たっくんその娘誰?」
フレデリカは珍しいダークエルフ幼女の突然の登場にキョトンとしていた。
「ああ、昨日からトコトコと勝手についてくるんだこのガキ。どうやら両親の記憶が曖昧なようだから念の為交番に預けたんだが、転移魔法とかいろいろ使って俺んちに転がり込んできたんだ」
「ガーン! 幼女と二人暮らしィ! た、たたた、たっくんってロリコンだったのォ――! この美しき私を差し置いてぇ――!」
「おいっ! 人の話全然聞いてないだろ。どう考えても不可抗力だろこれ!?」
タクヤとフレデリカが言い合いになっているが、ここでルゥルゥが、
「タクヤ様ぁ、早く自己紹介させてくださいのですぅ!」
「「すんません」」
彼女は若干であるが頬をぷくーと膨らませてそう言った。
「はじめまして、タクヤ様がいつもお世話になっております。私の名前はルゥルゥと申しますですー」
ぺこりとお行儀よくお辞儀をするダークエルフ幼女に
「フレデリカよぉ。たっくんと同じ冒険者ギルドでタンク役をしているわよん。ルゥルゥか……、ルーたんってことでいいかしらぁ?」
「たんっ!?」
「“たん”じゃだめなのぉ?じゃっ、ルーたま?」
「はぅう~、たまって、もはやわけがわかんなないですぅ……」
フレデリカはこのダークエルフ幼女の仕草があまりにも可愛らしいのでたん呼ばわりしようとしたのだろうとタクヤは顎に手を当て彼女たちをじっくり観察していたが、
「タクヤ様はどちらがいいのでしょうか?」
「いや、なんつーかたまじゃ変だし、ルーたんってことでいいんじゃないかぃ?」
タクヤはどうでも良さそうに後頭部をポリポリと掻きながらルゥルゥに言う。
「じゃ、たっくんの仰せの通り、ルーたんで♪ よろしくね、ルーたん」
「よろしくお願いしますですぅ。フレデリカさん。ところで“ぼうけんしゃぎるど”ってなんでしょうか? “たんく”って言葉の意味もわかんないですぅ」
そうか、ルゥルゥはそもそも冒険者業界を全く知らないわけだから、いきなり専門用語を出されてもわからないわけだ。
タクヤは彼女らの割って入ると、
「んっ! んー! こほん、フレデリカ。専門用語使いすぎなのはお前の悪い癖だ。この娘は多分……、多分だが街の人間じゃあないんだろう。冒険者ギルドとは、例えば町や村の人間に危害を加える魔物を追っ払うのをギルドというチームを組んでやる仕事のことだ」
「ま、他にも巨竜などの大型魔物を討伐したり、なくしたお宝を探したり、地脈って魔法の力の源の探索とか結構いろいろやってるわぁ」
「んでタンクってのは、冒険者ギルドの中では味方の盾になる人のことを俺たちはそう言っている。ちなみに俺はサブタンク、つまりはこの女の補佐しながら2人目の盾役ってこと。はぁ……、後衛のマジックキャスターがいいんだけどなぁ、攻撃あんま受けないし、羽振りいいし……」
タクヤは思わずため息をつきぶつくさと文句を垂れる。
「前から言ってるんだけどそれ、たっくんじゃ務まらないわぁ。さっきからこうしてたっくんと話し合ってたのは、マジックキャスターの確保なのぉ」
「うちのギルド正式にはマジックキャスターがいないから、よそのギルドやソロの冒険者から請け負ってもらう事になってるんだ」
「いないんだっけ? リーダーが使えるんじゃなかったっけ?」
「だめだっ、あいつはこちら側に出てくる気配がまったくないから、そもそも人数に入ってない。そんなことより早く変わりのマジックキャスターを……」
「あ、あのう……、お二方さん……」
会議モードになっていたタクヤとフレデリカ両名はゆっくりとルゥルゥのいる方へ首を回転させる。
「私なら魔法扱うことできるのですが……」
「「!!」」
幼女の小さな手にはひゅるひゅるとミストの竜巻が発生しており、おそらくであるが、水属性魔法と風属性魔法の合わせ技のミスト・ストリームだろう。
「む、無詠唱……ですって……? ただでさえ風属性魔法はコントロールが難しいのに、それを暴発もなく小規模に収めている……やるわね……」
「これくらいなら普通かと思うんですが」
「いやいや、ルゥルゥ、お前がやってること現役バリバリのマジックキャスターでもなかなかできないから。竜巻で店ぶっ壊すから」
マジックキャスターが前線より後方支援である理由は繊細な魔力コントロールにあるという。
「タクヤ様、私をこのギルドで同行させてくれませんか?」
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