第10話 見よう見まね
「じゃあ…二人とも…早速リンクに入ってみる?」
ミドリコーチの思いがけない言葉に驚いた僕…
「えっ!!そんな…素人が滑らせて貰ってもいいんですか…?」
「勿論よ…見学だけじゃスケートの楽しさが分からないでしょ…?」
「わぁ…」「やったぁ…」
僕は少し嬉しそうな表情のリカと顔を見合わせた…
「リカ…一緒に滑ってみるかい…」
「はい…ダイスケさんと一緒にですよね…
実は私…ダイスケさんと滑れたら良いなあ…って
思って今日、ここに来たんです…」
「そう!!じゃあ…ノブからスケート靴を二つ借りてくるよ…」
準備が出来た僕とリカはホワイトフローリングのリンクにおそるおそる降りてみる…
コーチが
をオンにしてね!」と声をかけて下さった…
僕達の生まれる前…もともとフィギュアスケートは氷の上を滑るスポーツだったらしい…
でも、リンクをエッジで削っていくからどうしても後から演技を行う者に負担がかかってしまうのをホワイトボードの床…ホワイトフローリングの上を特殊な樹脂のブレードで滑っていくという競技方法が開発されたのだった。
さらにブレードにマグネットが搭載されて体重をかけた方と逆に反発力を生みだす装置により、アイスリンクと全く同じで色々な演出が楽しめるようになり、アイスショーやフリースケーティングは今や、アルタイルだけではなく、ヴェガやデネブでも多くの人に楽しまれている…
僕は手すりから手を離して少し前に体重をかけてみた…ホワイトフローリングの上をゆっくり滑っていく…
「あはは…リカ…滑れたよ…楽しいよ!」
「ダイスケさーん!」
そんな僕を見ていたリカは笑顔を見せて、手を振ってくれた…
そして彼女は手すりに捕まったまま、隣のリンクで練習しているエキスパートクラスの練習に目をやるとそこで滑るミキのスケーティングをずっと見つめている…
「ダイスケさん!」
リカに呼ばれて僕はもう一度彼女のいる場所まで戻った。
「どうしたの?」
「ちょっとブレスフォンを貸してもらえますか?」
「ああ…いいよ…」
僕は腕からブレスフォンを外してリカに渡した…
彼女はブレスフォンを伸ばしてネットワークに繋いだ…そして画面を見つめる…
そして、ブレスフォンを左腕にはめると
「…よっ…と!」
彼女は手すりを離してフローリングを蹴って滑り出した…腕を伸ばし、遠心力をつけてその勢いを上半身から下半身へスライドさせる…
リカはくるくるっと綺麗に回り出した…
「マ、マジ…?」
僕はリカのスケーティングにただただ驚く…
コーチもリカの滑りを目の当たりにして…「あら…あの子…初心者って言わなかったかしら…?」
「ちょっと…コーチ…」ミドリが振り返るとそこにはミキの姿があった…
「あんな少しかじっただけの部外者になめられてどうするんですか…
今、サークルが大変な時だっていうのに…私が、ガツンとやってやりますよ…」
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