第13話 ミカエル君、お寺に馴染む
―― どうしよう。強がって出てきちゃったけど……モン・サン=ミッシェルに帰ろうかな…。
ミカエル君は悩んでいた。
いろんな仏像が挨拶に来てくれるが、怖くてまともに話せなかったし、夜はチビりそうになるほど怖い。
―― でも、いま帰ったら本体が…この先もずっとバカにしてくるな…。
それは悔しい。
「こんにちは!」
ビクッ!
かわいい声だが顔は怖いはず。
もう気絶しないぞ!と腹に力を込めて、そろりそろりと振り返った。
「こんにちは!私は鳥居。あなたがミカエル君?」
―― 怖くないどころか、可愛かった。
petit(プチ)ミカエル君より少しだけ低い身長(見下ろされて怖い思いをしなくて済む、不動明王に見下ろされた時は超怖かった。)
かわいいお顔、大きなキツネ耳とフサフサの尻尾。
「…こんにちは」
お返事できた。
ミカエル君は鳥居ちゃんと普通に話せた。
いろんな仏像が挨拶に来てくれるが、怖くてまともに話せなかったことを、とても気に病んでいると打ち明けると、寺院と神社の関係者がとても心配してくれていたことを知る。
「ごめん…僕…」
「気にしないで!ミカエル君が元気になってくれたらそれでいいの」
鳥居ちゃんがにっこりと笑った。
渡り廊下に並んで座り、足をブラブラさせながら仲良くお話しする2人を不動明王たちが遠くから見ていた。
「ぐぬぬ…ワシの顔をみて気絶したのに…。悔しい…」
悔しがる不動明王。
「僕は泣かれたよ…」
しょんぼりなピグモン。
「不動明王さまー!」
鳥居ちゃんが不動明王の名前を呼びながら走ってくる。ミカエル君も一緒だ。
「ごめんなさい…僕、ちゃんとお話しできなくて…」
「ミカエル君が元気になってくれたらそれでいいのよ、不動明王さまたちだって怒っていないわ。だって仏様ですもの!」
鳥居ちゃんが、ね?とほほ笑みかけてくる。
「う、うむ!その通りじゃ!」
―― 本当は傷ついていたけど強がる不動明王。
「僕、ここのみんなと仲良くなれるかな?」
「大丈夫よ!」
「うむ。ワシらな、時代に合わせて見た目を変えてきたのだが、ここ数百年ほどアップデートしてこなかったのでな、怖い思いをさせてしまったのう。いまの時代に合わせることにしたぞ」
「ワシらいま交代で見た目を調整中なのじゃ」
「ワシら、もともとは製造当時基準のイケメンじゃからのう!」
「現代風にアップデートしたら怖くないぞ!」
不動明王たちは仏のプライドにかけて、本当にイケメンにアップデートしてきた。
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