第17話「告白」
We are アルバイター
「まったく、わざわざ来なくてもよかったのに」
「すみません……。本当はバスで家まで帰るつもりだったんですけれど」
いつまでも寒空の下にいるわけにもいかない、と広永さんに半ば乱暴に連れ込まれた車の後部座席から言い訳がましく答える。
車というのは、広永さんの車である。どうも広永さんの家は交通の便が良くない所にあるらしい。
ぼやける視界の中、手の甲で汗を拭う。やっぱり風邪をひいている中、バス停で寝転がっていたのは良くなかったな……、うまく思考が回らない。
「本当は? じゃあなんでバス降りたの?」
運転中の広永さんはバックミラー越しにこちらを見てくる。
ううん……。なんでかと言うと。
「…………なんか、広永さんといると熱が治まるというか、気分がよくなるというか」
ぼそぼそと口が動く。
「……普通でいられるような気がしたから」
「え?」
冷静に頭が働かない。思いついた言葉をそのまま口にする。
「……バイトは置いておいて、広永さんはなんというか、僕の身の回りじゃ一番普通だから」
「…………」
「……今まで僕にこんな風に向かい合って話してくれる人は」
「……僕の夢を笑わずにいてくれた人は、あなただけでした」
「…………」
広永さんがそこで何か言ったのか、はたまた何も言わなかったのか。僕には何も聞こえなかった。
って、あれ? 僕、今何を話したんだっけ。
まぁ、いいや。
そんな単純な思考も回らず、僕は気怠さのままに瞳を閉じた。
気づけば僕は自分の家のベッドに寝ころんでいた。布団がかかっているところや、ベッドの傍らにお粥がつがれているのを見る限り、広永さんが準備してくれたようだ。
だって父さんと母さん居ないし。あと妹も。
「広永さん」
そう呼んでみるが、返事はない。
ゆっくりと体を起こす。照明を落とされた自分の部屋はいつもの様子を呈していた。
なんか、理由は分からないけれど少し落ち込む。と、その時前髪が目に入った。
おかしいな、僕の前髪はそんなに長くないんだけれども……。
「って、カツラ被らされてるやないかーい!」
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