第12話「ドライブスルー」
「あ、時間だ」
丑三つ時と言われる午後二時。この時間になったら、このお店は店内の掃除を行う決まりになっている。いつもこの掃除は広永さんが行っているのだけど、今日は仕入れの方で問題が起きたのかずっと奥のパソコンの前に付きっきりになっている。正社員さんもそれに付き添うようにずっと電話をかけっぱなしだ。
という訳で、お店の掃除を一人でする。いつも広永さんがしている様子を見ているので特に問題は無いはず。掃除棚からモップとバケツを取り出す。
「さて……やるか」
バシャバシャ。モップを水に浸して床を滑らせる。見ているだけじゃ分からなかったけれど、案外気持ちいい。
掃除すること十分。ようやく店内がピカピカになったところで、奥から声がかかった。
「千屋ちゃーん。悪いけど、ドライブスルー出てくれない?」
広永さんがそう言う。あれ? ドライブスルーに誰か来たら音が鳴る筈なんだけど。
「まぁ、気づかなかっただけなのかな……」
ドライブスルー用のヘッドフォンをつけて、外についているカメラから映る画面で、車を確認する。
…………。
いや、誰もいないんですけど。
「広永さん。誰もいませんよー」
カメラを見ながら広永さんにそう言う。しかし、広永さんの声は変わらず
「ドライブスルー出てくれない?」
ん? そこまで言われると、何かおかしいのかと思う。カメラが壊れているのかな?
モップとバケツを片付けて、画面を確認する。そこは特に異常はなかったので、今度はカメラが設置してある所に出る。
けれど、
「……誰もいないじゃん」
店内に戻る。再度画面を確認して広永さんのところに行く。
「広永さん。ドライブスルー、誰もいませんでしたよ」
そう言うと、広永さんは意味が分からないと言いたげに首を傾げた。
「私、何も言っていないけれど」
「……………………………え?」
正社員さんの方を見る。けれど、正社員さんも不思議気に僕を見ていた。
「い、いやいや。なんですか、二人して僕を騙そうとして。やめてくださいよ――」
その時、ドライブスルーに来客を知らせる音が鳴った。
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