19 空色のバス ……さよなら。もう、会えなくなっちゃうね。

 空色のバス


 ……さよなら。もう、会えなくなっちゃうね。


 橙色の煉瓦造りの道の先には土色の道路があった。木の葉たちはその土の香りのする道をゆっくりと散歩でもするように歩いて、それから何事もなくバス停まで到着した。女の子の言った通り、大きな青色のバスはずっと走り出さずにバス停で木の葉たちの到着を待っていた。三人の大人たちもそれが当然と言わんばかりに、全体的にゆっくりと行動していた。バスのほうが乗客の到着を待つというその事実を不思議に思っているのは木の葉一人だけだった。青色のバスは大きくて、その内側がよく見えない。でも、どうやらその青色のバスには運転手さん以外の人は誰も乗っていないように木の葉には観察できた。大きな青色のバスの乗客は三人組の大人たちと女の子と猫一匹だけのようだった。

 バス停の横にある小屋の中には、女の子たちの荷物が置きっぱなしになっていた。その荷物の量は、なぜかとても多かった。その大量の荷物をいろいろと整理したりして、出発の準備をしている三人組の大人たちの邪魔にならないように、木の葉と女の子と黒猫は空いているベンチの端っこのほうに並んで腰を下ろした。二、三度の乗り降りを繰り返し、三人組の大人たちはバスに大量の荷物を乗せ終えた。ベンチの上に残っているのは木の葉たちを除けば、あとは小さな赤色のリュックサックが一つと白い手提げ袋が一つだけだった。赤いリュックサックは女の子のものだろうと予測できた。でも白い手提げ袋のほうはなんだろう? と思い、木の葉はその袋の中身に興味をそそられた。

「さあ、小の花ちゃん。出発するよ」と年老いた男性が言った。

「はい!」と小の花と呼ばれた女の子が元気良く返事をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る