第4話 ウセモノ探しと蝶々

舞い込む『縁視』の仕事

7係のメンバーは全国あちこちに派遣されることが多い。

その頻度は青森に派遣されっぱなしのメンバーに次いで、私かもしれない。



歴史の深さと現代的な感覚をあわせもつ巨大な駅には、忙しなく交差する人々の群れ。

いつものバッグでさえ行きかう人々の荷物にぶつかってしまいそう。

朝だというのにどこから湧いてくるんだと思うくらい、京都駅は人でごった返していた。


私は1人で日帰り出張に来ている。



今回は京都を中心に担当している支援三課 1係からの要請だった。

警察が音を上げた行方不明のモノとヒトの捜索依頼。


万物は『縁』で繋がっている。

手がかりがないのなら、必ず存在する『縁』を辿って探せばいい。

発見の実績と解決への早さから、縁視えにしみは『失せもの探し』が得意という共通認識を持たれている。

そのため、定期的に全国の部署から呼ばれては、私は各地へ派遣されてきた。



「吉川さん、お疲れ様です」



東京の局員よりも、地方の局員の方が7係や『縁視』に対して態度が柔らかい。

むしろ東京だけが冷たいのかも、なんて思ってしまうほど。

駅近くの三課の拠点で来客対応をしている上品な女性は、いつもの通り優しい笑顔で私を迎えてくれた。



「篠さん、お疲れ様です。また失せもの探しの依頼をいただいてきたのですが…」

「ええ、係長から伺ってますわ。いつもありがとうね」

「いえいえ、『縁視』の力を役立てられるなら本望です」



ふふふ、と上品に笑う篠さん。

綺麗なグレーで染め上げた髪を揺らしてカウンターから姿を消し、タブレットを持って現れる。

私も携帯端末を取り出して篠さんの方へ向けると、ピロリンと音がしてデータが届いた。



「お茶も出せなくてごめんなさいね。丁度1時間後にアポが取れていてね、すぐ向かっていただけないかしら」

「そうでしたか、では早速向かいます」

「今日のお願いは2つよ。最初の仕事が終わったら京都宇治南警察署の内藤さんを訪ねて頂戴。時間はいつでもいいそうよ」

「わかりました。いってきます」

「いってらっしゃい」



篠さんはよかったら、といくつかお菓子を私に手渡して、扉を閉めるまで優しい笑顔で見送ってくれた。


…さて、最初は『家』か。

私は再び旅行客で賑わう街に入っていった。



――――――――――



最初の依頼は『モノ探し』

貴重な家宝が1週間も行方不明らしい。

電車を乗り継いで宝ヶ池に向かった私は、端末の地図を見ながら『斉郷さいごう家』へ向かった。

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