第74話【夏休み ADバイト⑬】


 「ねぇ、ケント君。私と約束してましたよね。」

 え.......あ.....した.......かな?

 そう言って彼女はまた俺の両手を優しく掴んでくる。


 「ね?ケントくん.....。ふふ」 

 そしていつ間にか彼女の顔は俺の顔の至近距離に.....。

 え、アイドルの顔が.....。

 し、しかもなんでそんな上目遣いで......柊さん?

 

 「ね?王子......。」


 「は、はい......。」

 

 って......王子?


 「ちょ、健人。あんた何ふざけてんの!私見たわよ。あんたまだ彼女にlineの返事してなかったじゃない!」


 あ.......確かに。やっぱしてない。

 って俺いつの間にか柊さんに『はい』って言葉が勝手に.......。

 やば......。



 て、うぉ.....。

 「ちょっと柊さん。離しなさいよっ。」

 気がつけば柊さんの両手を俺から払いのけている彼女。  


 「もう。何ですか。邪魔しないでください。星野さん。」


 え........まじでこれ何どういう状況。


 「そ、それはあんたでしょー!健人は私と今から出かけるの!てか柊さん。あんたアイドルでしょ。それをこんな一般人と!ちょっとアイドルとしての自覚が足りないんじゃない?」


 「ほ、星野さんがそれ言いますー?そっくりそのままその言葉はあなたに返します!」


 「はぁー?わ、私は幼馴染だからいいのよ。そう幼馴染だから。でもあなたは違うでしょ。柊さん。ふふっ」


 おい、ほんとこれはまじでどういう状況だ。


 「な、ぎゃ、逆に駄目でしょそれは。ずるい。ずるい。ずるいですー!」

 

 ずるい........?

 え、まじで何これ。どういう状況?


 「ふふっ、ほんと昔から健人は私にべったりで大変だったんだから。ねー健人!」


 いや.....おい嘘をつくな。

 今は知らないが、昔はどちらかと言えば.......。


 「く........な、なら私だって......。」


 え........。

 何? え?


 「ふふ、私もべったりしちゃいましたー。ふふっ。どうですかケントくん。」


 え? ちょ、え

 ハ、ハグ.........っていうか、だ、抱きしめられてる?


 「ふふ、温かいなー。ケント君の身体。ふふっ」

 

 え、まじで何。え?

 ってか、お、おいこれやばいって。

 え、ふ、ファンがいたらどうする。

 って、まじなにこれ


 間違いなく殺されるぞこれ......。

 ってまじ何これ。


 そんなことを考えながら俺は急いで周りをみわたすも幸い誰もいない。

 俺以外は撤収済みか.......助かった。


 「ち、ちょ、はぁ? な、なにしてんのよあんたー!」


 「ふふ、見てわからないんですか?」

 

 「く........ま、まじであんたアイドルなんだからそれは駄目でしょ。それはー!ってか何であんたがそんなに健人に構うのよー!」


 「ふふ、秘密です。ね、ケントくん?」


 「.......。」

 「け、健人.......あんた。てか早く離れなさいよ。早く。こんなとこ見られたら大問題でしょ。すぐ人がくるわよ。人が!」


 「ふふ、別に私はいいですけど......。」


 「な、ふ、ふざけるなー!早く離れろっ」

 そう言ってまた柊さんの身体を強引に俺から引き離そうとするミキ。


 でも.....ほんとに人がくるぞ。これ。

 それにまじで何だ。この状況。

 い、意味がわからなすぎる。

 ひ、柊さんちょ、さすがに...ちょ。

 さらに密着が......。


 「ふふ、ケントくん、顔が赤くなってませんか? ちなみに私は.......どうですかね?」

え.......ちょ、ほんと、え?

  急に何を......。


 「ほんとに離れなさいってばー!」


 ほんとマジでなんだ。

 なんだこの状況は......。

 まじで........。


 「って、あ........人。」


 「「え........」」



「どうも.......続けてください。」



 「「「........。」」」


 ま、また、君か.........。

 そ、そんな狭い空間に......。


 よくわからないけど、とりあえず俺達は彼の出現によりゆっくりと解散。


 うん。ほんと何もなかったかのようにゆっくりと......。


でもまじで何だこれ.........。

 何だったんだ.......。


 意味がわからなすぎる.......。


 「.......。」

 

 そして俺についてくんな.......。

 うん。


 ついてくんな......。


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