第50話【試験勉強】
修学旅行が終わったと思ったら、もうすぐ定期試験か......。
そして、それが終われば夏休み。
ふふ、ようやくか。
とりあえず俺はまだバイトにも入ってはいけないみたいだし、今回は過去最高得点でも目指すか。
考えようによってはテスト前でちょうど良かったかもな......。
あぁ、でも本当にもう少しこの地獄を我慢すれば長い長い夏休みか。
不思議と力も湧いてくる........。
「ははは、今回の定期試験も俺の無双かな。」
「あぁ、多分っていうか絶対今回もこのクラスの一番はお前だって。」
「榊くんってほんとに頭いいもんねー」
また、俺の耳には榊たちの騒音が聞こえてくるが.......何かおかしいな。
一応.......毎回
大したことはないだろうが学年の最高得点をとっていたのは俺だと思っていたのだが。
もしかしてずっと同率タイだったのか?
いやさすがにそれはないだろ.......。
まぁ、どうでもいいけど。
そんなことを考えながら今日も寝たフりをしていると、俺の肩が優しく誰かから叩かれる。
ん?
「ま、間宮くん。もうすぐ試験だね。」
そして顔をあげた先には山本サヤ。
「あぁ........。」
「あ、あの.......」
どうした。
そんなモジモジして........。
「あ、あの、もしよかったらなんだけど私に勉強を教えてくれないかな。」
そう言って不安そうな表情で俺のことを見つめてくる彼女。
き、急だな。
彼女に勉強をか.......。
「失礼。」
すると今度は別人の声が教室の出入口の方からは聞こえてくる。
「ち、ちょっと勉強をあなたに教えて欲しいのだけど。今回こそはあなたに勝ちたいのよ。お願いするわ。」
渋谷さん。
君も........そんな急に。
しかも山本と同じ内容.......。
あと、君のせいでまた視線が.......。
って、え.......?
「ちょっと渋谷さん。わ、私が間宮くんに勉強を教えてもらおうとしているの。あなたは別に教えてもらわなくても既にすごく優秀じゃない。必要ないでしょ。」
「は? 何を言っているのよ。わ、私ぐらいになるともう自分よりも優秀な間宮健人ぐらいしか教えてもらえる人がいないのよ。山本さんは、ほら、そこにいる榊にでも教えてもらいなさいよ。ね、間宮健人。頼むわよ。」
「な、何を言っているのよ。ふざけないでよ。ね、間宮くん。私に教えて!」
何だこの状況は.....。
というか今思えば、渋谷さんは言うまでもなく、山本、お前もそれなりに頭良いだろ。
というか.......普通に自分の勉強に集中したい。
「おいおい、何だ何だ。渋谷さんにサヤ!勉強? ならそんな奴じゃなくて天才のこの俺が教えてやるよ。まじで任せろって! 俺なら二人まとめて教えてやるぜ」
「ハッハッ、さすがだな。まぁお前なら普通にできそうだけど、それはずるすぎるだろ。」
近くからは榊や高砂の声がまた聞こえてくるけど.......。
「ねぇ、間宮くん、お願い。私に教えて!」
「間宮健人!絶対に私よね。私にはその権利があるわ!」
無視はよくないと思うぞ......。
無視は。
ほら、またあいつ等........。俺の方に向かってすごい顔で睨んできてるじゃないか。
はぁ......。
それにしてもちょっとまたこの視線はほんとにやばいし。
ほんとなんだこの状況。
修学旅行の時もこんな状況があったよ......な。
ほんとに何だ。
あの時のことを思い出してしまい、俺はまた少し胸が苦しくなる。
ほんとになんで.....こんなに。
数カ月前の俺からは全くこんな状況は想像できない。
こんなに俺が視線を周囲から集める状況......。
「あ、おはようございまス どうしたんデス?」
すると今度はアリスが登校してきたようだ。
「とりあえズ、きのうはありがとうございまス。ママもトテもヨロコんでましたよ」
「ママ!? どういうことアリスちゃん」
「どういうことよ!」
あぁ、何で今日に限って日本語。
というかそうだ。昨日俺がもっと俺との会話でも日本語を使った方が勉強になるんじゃないかって言ったんだった.......。
あぁ.......
「フフ、間宮クンはワタシの二ホンごのせんせいなのデス。きのうもオウチでいっぱいおしえてモライました。」
「「お家!?」」
「ち、ちょ、アリスちゃん。そんなこと一回も私に話してくれたことなかっじゃない。」
「え.......。だってきかれませんでしたし。」
そう言って首を横にかしげるアリス。
「ま、間宮健人、私もあなたを我が家に招待するわ。」
「な、ま、間宮くん、私も。学校からそんなに遠くないしさ。ね。」
まじで何だこの状況......。
ほんとに........。
というか、なんで......こんなに急に熱心に。
何で......俺に。
しかも家とか.......。
違うよな........。
うん。やっぱり俺だしな。
俺だし.......。
ありえないよな......。
俺は勘違いはしない。
うん......。
ない。
「悪い。ちょっとトイレ。」
そう言って俺はとりあえずお手洗いに。
ほんとにこの視線には耐えられない。
「間宮くん。」
すると廊下に出た俺には、また誰かから声がかけられる。
ん?
「あ、田中くん。」
そこにいたのは最近何かと話す機会がある田中君。
「さすがだね。3人の家を通うのかい?」
通うわけないだろ.......。
また君は........。
そんなことを言ってくる彼にため息を吐きながら背を向けようとすると、また田中くんは俺のことを呼び止めてくる。
「まぁ、それはそれとして、間宮くんは夏休みは暇かい?」
急になんだ。
田中君も、もう浮かれ気分なのか。
気持ちはよくわかるが。
「なんで?」
「いや、ちょっと僕の兄がテレビ局でADをしていてね。ほんとにちょっとでいいんだけど夏休みに手伝ってくれないかな?」
「え、俺が........?」
「うん。そんなに難しい内容ではないんだけど。ちょっと人手がいるみたいでさ。他の子にも声はかけたんだけど。ほら僕も友達は少ないから.........。」
そういうことか。
「ほら、身なりとかは別に間宮くんの好きな恰好でいいし、ほんとそんなしんどいところではないから。お願いできないかな。ほんとに、高校生だし数日だけ単純な裏方仕事してもらうだけ。」
まぁ、さすがに夏休みになればバイトにも復帰はできるだろうけど。
なんだかんだで田中君にはお世話になっているからな。
変わっているけど......。
「ほら、仕事上、芸能人もたくさん見えるよ。」
確かに......。
この前ははその芸能人で大変な思いもしたけれど。
やはり......それは魅力的ではあるな。
今回は裏方だしな.......。
「ちょっと時間をくれないかな。」
「うん。いい返事を待っているよ。」
そう言ってとりあえず田中くんは教室へと戻っていった。
どうしようか。
でも.......ADのお手伝いか。
やっぱり興味は.......あるな。
まぁとりあえず、まずは彼女たちをどうしようか.......?
はぁ........。
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