修学旅行編
第31話【修学旅行。飛行機】
今、俺は北海道に向かう飛行機の中で、いつもと変わらずに寝たフリをして時間を潰している。
起きていてもすることがない.......。
楽しそうにはしゃいでいる奴らを見ているのも苦痛でしかない.....。
隣の席の男も、せっかくの修学旅行だというのに......。
こんな俺が隣では楽しくも何ともないだろう。
そこは素直に申し訳ないと思う......。
犠牲になったのは田中くん。
田中くんは友達ではないが......普通に良い奴だと思う。
_____「僕、間宮くんの隣でもいいけど」
そう言って、残酷な俺の隣の席決めじゃんけんが繰り広げられた際にも、自ら手をあげてくれた.......。
「でも」という言葉は気に触る部分もやはりあるが......
まぁそれを差し引いても、ありがたかった。
かなりありがたかった。
田中くん......。彼もどちらかと言えば俺と同じ暗い側の人間だ。
クラスでも全然目立っているとは言えないと思う。
ただ俺と違って彼には友達がいる。
その差はでかい。
俺の隣に座ってくれる器のでかさからしても......
まぁ彼に友達がいていることについては納得できる。
とにかく俺は何だかんだで、彼にはかなりの感謝をしている。
ありがとう......。田中君。
君ののおかげで、精神的ダメージがかなり回避できました......。
~田中side~
今、僕の隣にいる間宮くんは不思議な男だ。
自分的に、この言葉を使うのはあまり好きではないが彼は「ぼっち」。
教室でもまともに彼が他人と話をしているところを見たことがなかった......。
クラスの大半も、そんな暗い彼を腫れ物のように扱っているのが現状だ。
特に、このクラス.....いや学校でも目立っている榊くんや守谷くん達の彼に対する当たりはかなり強いように思える。
僕がもし、彼と同じ立場だったならば確実に不登校になってしまっているだろう
正直、僕の性格もお世辞でも明るいとは言えないので他人事ではない......。
今年はたまたま、去年仲が良かった友達と同じクラスになれたから良かったけれど........。来年は我が身かもしれない。
おそろしい.......。
ただ、ここ最近の彼は何かがおかしい。
特に最近の彼は、可愛い女の子との関わりがかなり多い気がする。
それも、女の子の方からいつも絡まれている。
おかしい......。
まずはクラスの山本サヤさん。
正直、僕は彼女に話しかけられたこともないし、彼......間宮くんだって元々は彼女と目を合わせたことすらなかったはずだ。
この学校、いや全国的に見てもトップレベルの可愛さを持つ彼女は、我々の手の届く存在では普通にない。
榊くん達のような人気者でないと関われない存在。
ずっと、そう思っていた。
それが今やどうだ.......。
僕が見る限りでは間宮くんは山本さんと毎日会話している。
それも、山本さんから間宮くんにいつも話しかけにいっている様だ。
以前まで頻繁につるんでいた榊くんや守谷くんのことは見向きもせずに、最近の彼女は間宮くんばかりに夢中のような感じ.......。
そして.....間宮くんと喋っている時の山本さんの顔はいつも赤く染まっている。
まるで、好きな人に恥ずかしがりながらも、ちょっかいをかけにいく中学生、いや小学生のように.....。
その姿は百戦錬磨のモテ女と噂されていた学校の有名人、山本サヤのイメージとは程遠い......。
全くの別人をみているようだ。
一方で間宮くんの方は山本さんに何を話しかけられても、ボディタッチをいくらされても、何故かいつも無表情でいる。
ほんとに不思議だ。
僕なら山本さんにあんなにかまってもらえたのなら、ニヤニヤ顔と心臓のドキドキで一瞬で気絶してしまうだろう.......。
あと、その姿を鋭い視線で見つめる榊くん達の殺気に対しても、僕ならば一瞬で気絶してしまうだろう......
次に転校生のアリスちゃん。
金髪蒼眼のドイツ人の美人さん。
アリスちゃんは容姿だけではなく、その小動物のような可愛さ、アワアワとしたドジっこ感が良く、僕を含めた多くの男たちが彼女を守ってあげたいと庇護欲を掻き立てられてしまう人気の女性だ。
彼女は人見知りなところがあるのか、あまり自分から誰かに積極的に話しかけたりはしない。
しないのだが、一人だけ例外がいる。
そう。それが間宮くんだ。
彼女は気がつけば何故かいつも間宮くんと一緒にいるのだ.......。
アリスちゃんはよく間宮くんの袖を、その小さな手でクイクイっと引っ張り、顔をこれでもかというぐらい彼の耳元に近づけていつも楽しそうに何かを喋りかけている。
可愛い。
ただ、やはり間宮くんの顔はここでも無表情。
不思議すぎる......。
僕なら彼女に袖を可愛く引っ張られたり、あの可愛い顔で耳元で何かを囁かれたりしたら.....デレデレ顔でまたもや一瞬で気絶してしまうだろう。
あと、もちろん榊くん達の殺意の視線にも......。
そして最後は、隣のクラスのマドンナ渋谷アリサさん。
彼女はこの学校の気高き完璧美少女。
誰も触れることのできない高嶺の華......だったはずだった。
それが今やかなりの頻度で彼女は間宮くん目当てで教室に乗り込んでくる。
かなり積極的に.......。
あの榊くん達が無視されて、あの間宮くんが追っかけられているのだ。
ほんとに不思議すぎる......。
しかし、やはり間宮くんの顔はそんな彼女にも無表情。
僕なら、渋谷さんに名前を呼ばれただけでも興奮で気絶してしまうだろう。
ほんとに全てが不思議すぎる
この数ヶ月で一体何があったんだと思うぐらい、彼は可愛い女の子から構われるようになった......。
彼自身は何も変わってないように思えるのに。
非現実的だが、ほんとに妖術か何かを使ったとしか考えられないレベルだ。
正直.......この現状は同じ男として羨ましすぎるし、理由が知りたい。
是が非でも知りたい。
そしてありえないだろうがあわよくば、僕も間宮くんのように可愛い女の子に構われてみたい。
今も......数分おきに山本さんとアリスちゃんが遠くの席からチラチラとこちらを見てくる光景。
まぁ、こちらと言うか間宮くんをだが......。
山本さんなんか、頬を赤く染めながらスマホをこちらに向けてくる......。
間違いなく彼、間宮くんのことを撮っているのだろう。
可愛いなぁ......
アリスちゃんなんて隙あらばトコトコと席から離れてこちらに向かってこようとするが、添乗員さんに止められてトボトボと帰っていく。
ほんと可愛い.....
そして別のブロックから、何故か僕らの席の横の通路を通って何度もお手洗いに向かう渋谷さん。
完全に遠回りだ。
美しい......。視界に入るだけで僕は心臓がドキドキする。
でも、そんな可愛く美しい皆さんの視線の先にはやっぱり僕ではなく......隣で眠っている間宮くんがいる。
本当に不思議すぎる.......。
一体彼のどこに、彼女たちを惹き付けるような
魅力があるのだろうか。
本当に、彼は一体何者なんだ......。
そして僕こと田中は、この修学旅行で彼の正体を見破りたいと意気込んでいる。
そんなことを考えていると、もうすぐ飛行機は着陸時間。
さぁ、楽しい修学旅行の始まりだ。
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