第44話 星を見るわけ

 顔を上げろと人は言う。

 空には星が輝いていると…

 宇宙は広いのだと…。


 星が輝く、一際瞬く星を僕は見つけた。

 その星をよく見たくて、僕は望遠鏡を買った。


 もっとよく見えるように、更に高価な望遠鏡を買った。


 無数の星が散りばめられた夜空で、僕は、その星を見つけた。

 毎日…毎日…僕は、その星だけを見ていた。


 他の星など、目に入らなくなった。

 だけど…星に手は届かない。

 星から僕は見えない…。


 星は、同じように輝く星にしか興味はないんだ。


 下から見上げる空には輝く星がある。

 僕は誰からも見えない…地上で…

 顔なんか上げなければ良かった。

 星なんて知らなければ良かった。


 自分の存在が酷く矮小に思える。


 知らなければ…欲しがることもなかったのに…。


 僕は、彼女を知ってしまった。

 知らなければ…よかった…。

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