旅の終わり

 ゆっくりと雪は降り始めていた。

 温かいココアの余韻。

 もうすぐ星が降る。この雪は、午前0時には星に変わるだろう。

 あの鉄橋の下から、星の粉雪を見に行くんだ。

 

 急がなければ。

 誰もいない山林の中を僕は走る。

 あの場所は誰も知らない僕らだけの場所だから。

 

 彼女はそこにいない。

 

 体は急に冷たくなった。

 ザアザアイウ雨ノ音……

 滝ノ様ニ流レテ……ユクヨ……

 僕はひとり、濡れネズミ……この表現はあまりにお似合いに思えた。

 壊れた鉄橋この残骸は巨大な動かぬ竜の死骸にも似て、

 僕はその下で、記憶を漁るネズミ……僕も動かないままで……

 このあまりに大きな鉄橋の下で座り込んだままで……

 記憶を漁る……

 

 ここは最初から僕だけの場所だったんだ……

 いつかの列車事故の場所は見えるだろうか……

 少し首を持ち上げて、鉄橋の西の端に消え入るあたりを眺めてみる。

 

 雨に煙って

 列車はあの場所にまだ倒れたままだった。

 

 もう雨が僕には強すぎて、あそこまで行けない……

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