第25話 茶色いフードの三人

 足音は確実にその音を響かせて来た。コルカは壁から大剣を掴み腰に掛けた。


「おおおおっ!!」

 

 突然コルカが大声を張り上げた。大声は狭い洞窟内に反射し、俺達は必死に耳を塞いだ

。そしてコルカが出口の方角へ駆け出していく。


 俺はコルカの後を追いながら考えていた。先刻のコルカの大声は侵入者達への威嚇だ。

続くコルカの足跡を聞けば、用心深い相手なら洞窟の外に移動するだろう。


 予想通り、侵入者達は洞窟の外に出ており

、コルカと対峙していた。相手は三人。いずれも茶色のフードを被っていた。


 防具は身に着けておらず、全員剣を手にしている。


「······この洞窟を住処にでもしようとしていたのか?生憎だが、俺が先に使っている。他所を探せ」


 コルカは大剣の鋒をフードを被った三人に向ける。その内の一人がゆっくりと口を開いた。


「······南方の聖なる森。かの地よりお前の足跡を辿って来た。聖竜を渡して貰おうか」


 それは男の声だった。コルカは長い前髪の下から鋭い眼光を男に向ける。

 

「どうやら新居探しでは無いようだな。お前の要望だが答えは否だ。五体満足で南へ帰りたくば立ち去れ」


 コルカの返答と同時に、三人の男達は三方に散開する。一人は手にした剣をコルカに振り降ろす。


 コルカは大剣でそれを弾き返す。だが、別の男がコルカの背中を狙っていた。


「コルカのおっさん!!」


 剣と剣が重なり金属音が響く。イバトがいつの間にコルカの背後に周りフードの男の斬撃を防いだ。


 途端に残りの一人が俺に向かってくる。イバトの行動で俺達は奴等から敵と認識されたらしい。


 あの馬鹿が余計な事を!いつも他人に無関心な癖に善行にでも目覚めたのか!?男の鋭い攻撃に俺は鋼の剣で受け流す。


 否応無く俺は戦闘に巻き込まれた。まずい

。俺は自分の経験からそう感じていた。自分の意志とは関係なく巻き込まれた戦闘は、得てして後手に回ってしまう。


 それは、命の危険が高確率に増すと言う事でもあった。フードの男の攻勢に、俺は完全に守勢に回っていた。


 間違いなくこの男は手練であり、俺より実力が上だった。イバトは俊足を生かし距離を取っていたが、殺られるのは時間の問題だった。


 唯一フードの男と互角に渡り合っていたのはコルカだったが、俺とイバトが倒されれば三人相手を相手には出来ないだろう。


 俺は藁にもすがる気分でパーティーの魔法使いを一瞥した。その藁は顔中に不安の文字が書かれており、右往左往して自分から行動する様子は見られなかった。


「クレア!何でもいいから援護をしろ!」


 俺は頼りない藁を一喝する。


「え?援護?は、はいい!!」


 クレアは魔法の杖をかざした。クレアの周辺の落ち葉が空に舞った。これは、衝撃波の呪文か!


 衝撃波は運良く俺を攻撃していたフードの男の方向へ向かったが、衝撃波は見えない壁に当たり四散した。


「ま、魔法障壁!?」


 クレアは驚きの声を上げた。くそっ!こいつ等魔法も使えるのか!?


「ぐわ!?」


 その時、クレアの魔法を防いだフードの男が苦痛の声を発し吹き飛んだ。俺の視界に、金髪の髪をした女の背中が映った。

 

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