石ころに恋して(恋愛⚠︎百合を匂わせる要素有)

 友達から借りたワークブックを胸に抱き、行きたい道を阻む男子生徒が退けるのを待っていた。その近くの席の子が、一度視線を落としてから問いかける。


「今日ってリスニング?」


「いや、一応借りてきただけ。多分長文読解だよ。借りに行ったクラスがだったって」


 少しぼかして伝えた、理由は数少ない友達を多く見せるため、つまり見栄である。

 嘘は言っていない、真実を少しぼかしただけに過ぎない。次の授業はコミュニケーション英語。これはただのに過ぎなかった、彼女の教室に行く為の。


 近くて遠い存在だった、フレンドリーに話してくれる一方でどこか一線を超えないところがある。

 友達だと思っているけれど、彼女からしたら道端の石ころや街路樹の葉っぱと同じで他の人と見分けなんてついていなくて、興味もないものなのかもしれない。


 相対的な価値が違いすぎるから話しかけるのが少しはばかられる。

 廊下から覗き込むと下ろした髪が落ちてこないように手で押えながら、机の脇に置いてあるリュックサックから何かを取り出しているところだった。

 教室のドアをスルーして、その隣の図書室に入った。立ち止まっていると変に思われるかもしれないから。

 てきとうな本棚の前で本を探すふりをしながら話しかけるイメージトレーニングをして向かうと、他の子が話しかけているところだった。

 その子は


「以前『あの子とでは違いすぎるから仲良くしない方が良いよ』とクラスメイトから言われて悲しい、そんなの気にしないのに」


 と話してくれた子だった。素直に話しかけられることが羨ましいと同時に先程話しかけなかったことを後悔した。

 仕方なく他の手短な友達に声をかけてワークブックを借りたのだった。

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