ツンデレすぎる男の子の話
「おーい!」
俺が声をかけると
「別にお前のこと待ってたわけじゃないんだけど?」
顔を背けて彼は言った。耳が真っ赤に染まっているのが見える。
「わかってるって。ちょっと待ってろ」
そう言って俺は自販機まで走って、ココアを買ってくる。
「ほら」
それを投げて渡すと、
「泡立つだろ!」
と彼が怒鳴ってきた。
俺と彼は幼なじみと言うやつで、小学校から高校までずっと一緒。だから分かるけれど、彼の優しさは伝わりにくい。そしていわゆるツンデレだ。
「悪ぃ悪ぃ・・・・・・」
そう言って彼の方に駆け寄った時、段差に気づかず、転んでしまった。すると、彼は手を差し出して
「全くバカなんだから。お前はやっぱり僕がいないとダメだな」
そう言った。さり気なく飛んで行った俺のお弁当袋を持ってくれている。
「はいはい」
強がってはいるけれど、この寒空の下一時間近く外で待っていたのだから、身体は冷え切っているはずだ。
二人で自転車置き場まで歩いていくと、俺の彼女がいた。
友達と話している所だったので、声をかけず手を振った。 彼女も振り返してくれた。
「ふーん。彼女?」
「おう!かわいいだろ?」
「ノロケ乙。末永く爆発しろください」
今のは、“末永く幸せになれよ”って意味だろう。全く、伝わりにくい奴だ。
そんなある日、彼が待っていないことがあった。まあそんな日もあるだろう、と思いあまり深くは考えず家に帰った。
チャイムを鳴らした瞬間、母が走ってきたものだから何事かと思えば彼が事故にあったのだとか。
急いで病院に駆けつけたけれど、もう・・・・・・。
彼は、ボールを追って飛び出した男の子を庇ったのだとか。
そう言えば昔、俺も同じことをしかけて、彼に怒られた記憶がある。
『とび出したらあぶないだろ!車にひかれたらしぬんだぞ!?』
もしかしたら、彼はその男の子と俺を重ねてしまったのかもしれない。
・・・・・・流石にそれは自意識過剰すぎるか。
「全く、バカだなあ。俺、お前がいないと
ダメなのによ。これから、どうすれば良いんだよ」
『男は泣かない方がカッコイイんだからな』
『目を擦るんじゃない!もっと傷つくだろ!』
『はあ!?フラれた?その女は見る目がなさすぎる』
彼との思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
『笑えよ。お前は笑った顔が一番
「これ、息子から」
そう言って渡された遺書は、下書きの後が残っていて
『字なんてキレイじゃなくたって良いんだよ』
と言いながら、気にしていた彼らしい。
『これをお前が見る頃には僕は一体何歳になっているのだろうか』
から始まって
『早く
を読む頃には俺の視界はボヤけていて、便箋はぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「忘れてなんかやるかよ。そんで俺の事を恨んでずっと
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