014 (閑話)世界の理その1/4
「竜登様はわたくしの代わりに大切な事をして頂くのです。効率よく働いて頂く為にもこの世界の事を説明したいと思います。もちろん、役立たずでは困りますから」
メフィストは話し始め、余計な一言を最期に添えた。まるで契約は済んだ、みたいな物言いが気に入らない。まだ契約すると応えていないのだが。
「それでは、
『わたくしはメフィスト・フェレスで御座います』と伝えました。
これが1つ目です」
名前は聞いているのに何故改めて自己紹介始めるのだ?それに『1つ目』っていったい何?困惑しているが話しは続けられる。
「次に2つ目です。
この空間。転生の間、転生の空間、神様の部屋、死後の世界。お好きな様に呼んで頂いて結構です。
ここに喚ばれた魂は、世界の理(ことわり)、真理真実を1つ知る事ができます。
何回か喚ばれたら、条件はありますが、その回数分、理(ことわり)を知る事ができます。
竜登様のケースでは5回ですから、5つ、理(ことわり)を知る事ができます。
殆どの事例では、1つ目で名前、例えば『私は神様です』とかそんな感じで終わってしまいますけど」
世界の理(ことわり)とか真理とか、ついでに言えば賢者の石というのは、魔術に触れた事がある者にとって垂涎なネタだ。
5回も人生を繰り返したのだ。その円環の中で厨ニ病的に魔術を追求した時代があったので、ちょっと興味が湧いた。
「真理とは興味深いね。でも転生1回に1つしか教えられないとか、結構ケチくさいじゃないか?勿体振らなくても良いんじゃ無いのかい?」
「最もですわ。わたくしもそう思いますが、下手に教えてしまうと転生先で『我悟りを得たり』と言い出されては反って世界を混乱させてしまいかねませんし・・・」
「あ~、握手会に参加出来て握手出来たから『このアイドルは俺の友達、いや恋人だ』って吹聴したり、ゲーム会社に面接できたら『俺はゲーム業界は詳しいぜ』と勘違いするとか、そういう感じか?例えは悪いと思ってるけど」
「ええ、そういう勘違いをされると考えて良いと思います」
「それから、転生1回につき・・・とか、え~と、なんて言えば良いんだ?そう何度も転生させる事が出来るものなのか?」
「それはもちろんです。役に立つなら何度でも、ええ何度でもお喚びしますわ」
強気な発言に、背筋に寒気を感じた。全身に鳥肌が立った感じもする。永劫に隷属されると考えるとゾットする。逃げ道は無いのだろうか。
「逆に言えば役立たずは要らないと」
「当然です。無能は要りませんわ」
つまり、仮に強制的に契約させられても、役立たずっぷりをアピールすれば良いのか。よし良い事を知った。でも裏付けが欲しいな。コレまでの話しが本当なのだろうか?
「教える真理とやらを嘘偽りで誤魔化すのは許されるのかな?」
「残念ながら、この空間では『嘘・偽り』を話す事はできませんわ。出来たら既にしてますもの」
「本当かい?メフィストは『悪魔』だろ。何故『神様』を名乗る?嘘が駄目なら名乗れないだろ?」
「何時、わたくしが『神様』と言いましたでしょうか」
「だって、ここは死後の世界で『神様の部屋』だって言ったじゃないか。『メフィストの部屋』つまりメフィストは神様って事にならないか。それに1つ目は『私は神様』と名乗るって」
「わたくしは、この空間の呼び方は自由ですと言っただけですよ。『メフィストの部屋』が良ければそう呼んで下さいませ。それに1つ目は『メフィストです』と名乗りましたし、『私は神様』は事例ですよ。もうお忘れですか?」
少々呆れ口調で反された。
「それから嘘偽りといえば、竜登様の自己紹介はギリギリでしたわよ。あだ名や別称だから良かったものの、もしも赤の他人の名前を名乗ったら、何かしらの制裁を受けていたと思いますわ』
ハンドル名の事を出されると耳に痛いが、ペナルティーを受けずに済んだのは良かったと思う。
嘘偽りは不可というのは解った。曖昧な発言は大丈夫と理解した。そして嘘偽りには罰が下るって事だかがどういう制裁が待っているのか気になるが、怖いから聞くのは止めよう。
「私は理(ことわり)を5つ知る権利を得た訳だけど、もしも最初、1回目で契約したら理(ことわり)を知る事はできたのかい」
結果論だが、知る権利が無かったらどうだろうかと気になるし、もっともっと生まれ変わりを繰り返したならば、より多くの理(ことわり)を知る事が出来たはずだ。と疑問が湧いた。
「ええ、竜登様なら違う形で知る権利を得ましたわ。きっと」
過去形な言い方が気に掛かるが、何度も使役できると言いたいのだろう。嫌な言い方だ。
「では3つ目になりますが良いですか。他に質問はありましたらどうぞ」
丁度良かった。考え込むと怖い考えになってしまう。
「いいえありませんので、進めて下さい」
「それでは3つ目、わたし達の目的についてです。
わたし達は『平和』を求めております」
「・・・はぁぁあ??!」
不覚にも歪んだ疑問符を放ってしまった。子供の口は滑り易いのか、驚きが漏れてしまう。大人の頃なら表情の変化程度で治めらたのに。
自分の失態に血の気が下がるの感じながら、左手で口を押さえて右手を伸ばして『ちょっと待ってくれ』みたいなポーズを取った。急いで思い浮かんだ事を整理する。
悪魔が平和を唱えるとか、凄く変だ。欲望を刺激し増大させて醜く混沌や混乱に導くもんじゃないのか?
「平和?なにそれ美味しいの」
って言ってやりたくなった。
「ええ、おいしいですわ」
メフィストが考えに割り込んだ。心を読まれてしまったのか?それとも・・・
「・・・もしかして、また言葉を漏らしてしまったのか」
メフィストは首を傾げて微笑んだ。
お゛~、の゛~~!!。
下がった血の気が今度は上がりきり顔が火照りだした。更に仕草が可愛いを思ってしまったから耳も熱くなった。両手で顔を塞いでもがく。
「独り芝居もその辺にして下さいな。お話しを続けたいのですか、大丈夫かしら」
ん?この失言はスルーなんだ。冷やかされると思った。椅子に座り直して答えた。
「は、はい大丈夫です。失礼しました。どうぞ進めてください」
「耳が真っ赤よ。本当に大丈夫かしら?」
不意打ちを受けてしまった。心臓の鼓動が感じるくらいテンパった。丘に揚げられた魚みたいに口をパクパクしながら、必死で呼吸を整えようと頑張った。
「正確に言えば、平和を求めているのは、わたくし達ではなくてその上のお方なのよ」
メフィストの後ろに黒板というかスクリーンが現れて、そこには三角形が表示された。その三角形は3つに区切られ第1世界~第3世界と文字が有った。
メフィストは三角形の頂点に教鞭を当てている。
「世界の頂点に召します神、高次元の頂点の存在、絶対なる存在、壮大なるエネルギー、創造神、お好きなように呼んで頂いて結構なのですが、曖昧にするとわたくし達の存在と混在していまいます。
ですので、天地、動植物、人、天使を含めてあらゆるモノを創造したという意味で、創造神と呼びましょう。
平和を求めているのは創造神。そして、その求めをわたくし達に要望されてます。応じる事が出来たなら、相応の望みを叶えて差し上げるとの事ですわ。
わたくし達だって叶えたい望みは御座います。叶えて頂けるなら『美味しい』提案ではありませんか」
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