デートという名のおでかけ ②

「ただいまです、きー君」



 そう言って花音は俺の家へと戻ってきた



 花音は水色のワンピースに、白色の上着を着ている。いつもより、少し大人っぽい雰囲気だ。長い黒髪を、一つに結んで、勉強を教える時に身に着けている眼鏡をかけ、そして俺のあげた帽子をかぶっている。



 学園に居る時とも、家に居る時とも運息が違う。なんというか、花音は七変化をしているというか、そんなイメージだ。色んな顔を持っていて、でも芯の部分には花音っていう女の子がいる。



「きー君、その服、私とのデートのためにですよねー。嬉しいです。きー君も私とのデート楽しみにしてくれたんだなって、本当嬉しいんよ。きー君、今日は楽しみましょうね!!」



 俺が花音の服装を褒めるより前に、花音は少しだけおしゃれをしている俺の服装にきゃーきゃーいっていた。



「きー君、私の洋服はどうです? 私によく似あっているでしょ? かわいかやろー?」

「ああ。凄く似合っている」

「ふふふ、でしょー? こんなに可愛い私と出かけられるなんて、きー君はしあわせものなんですからね?」



 花音はくるっと回って、ワンピースの裾を持ち上げてポーズを撮る。思わずそのポーズが様になっていてパシャリとスマホで撮ってしまった。

 花音は突然俺が写真を撮っても、嫌がる素振りもなく「ふふ、きー君、可愛く撮ってくださいね?」とほほ笑んだ。



「ああ。俺の撮り方が下手でも、被写体が花音なら全部可愛いだろ」



 俺も花音とのお出かけに気分が高揚しているのか、思わずそんな言葉を口にしてしまう。褒められて花音は嬉しいのか、「えへへ、でしょー。私可愛かもん」と笑った。



「で、花音、何処に行くんだ?」

「そうですね。あのですねー。食欲の秋ってことでスイーツ祭りが行われるんですよ。ちょっと電車で乗った所だし、人ごみだったらきー君と出かけても問題なかかなって思って」

「スイーツ祭り!!」

「秋だと栗とかかぼちゃとかかな? 寒くなってきたし、りんごとかチョコレートもあるかって考えるときー君とでかけたかって思いよったんよ。私たち甘い物すきやんか。一緒にいったら楽しいだろうなって」

「だろうな。行くか」

「うん!! いこいこ」



 花音がスイーツ祭りに連れて行ってくれるということで、二人で意気揚々と出かける。

 花音と歩いているところを見られたらややこしいことにはなるだろうけど、まぁ、学園の花音と雰囲気が違うし大丈夫だろう。




 そんなわけで花音と一緒に駅に向かい、電車に乗る。





「二駅ほど乗ったところですからね」

「ああ」



 花音とそんな会話をしながら、駅を降りる。二駅だけなので、すぐに到着する。休みの日だというのもあって、駅も込んでいた。花音の事を庇うように立って電車を過ごした。



「よし、きー君、行きますよ!!」

「ああ」



 花音と一緒に歩きながら――……人混みで、花音とはぐれそうになる。慌てて、花音の手を掴む。




「きー君?」

「花音、人多いから手を繋ぐぞ。いいか」

「うん! よかよ!!」



 花音は突然俺が手を繋いだのに、満面の笑みで頷いた。寧ろ嬉しそうに握り返してくる。花音に手を引かれながら、スイーツ祭りの会場へと向かう。

 スイーツ祭りの会場は、沢山の人であふれている。俺もたまに一人でぶらりとスイーツを食べに行くことはあったけど、こういう大きなスイーツ祭りに行くことなんてなかったから、わくわくしている。



「きー君、沢山食べましょうね。お腹いぱいになるぐらい食べて幸せな気持ちになりましょうね!!」



 スイーツ祭りの会場にたどり着いたけれど、俺と花音は成り行きでそのまま手を繋いだままだ。まぁ、この祭りの会場も人が多いし、花音も手を離す素振りはないからいいかと俺もそのままにしている。というか、花音は好奇心の赴くままに飛び出していきそうだから……とそこまで考えて、やっぱり花音は懐いた犬みたいだと思う。



「ああ。沢山食べような」

「うん!!」



 花音とそんな会話を交わして、手を繋ぎながらお店の並んでいるエリアへと突入していくのだった。



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