体育祭④
それから順調に体育祭は進んでいった。借り物競争があった時は、花音が大人気だった。好きな人とか、可愛い人とか書いてあったのかもしれない。しかし花音のファンクラブに流石に連れ出すのは止められていた。
花音も自分の番以外で走りたくないというのもあったみたいで、ファンクラブの人を止めてはいなかった。
花音も何度も借り物にされそうになっていたからなぁ。流石に何度も何度も連れ出されるのは大変なのだろう。本当に大人気としか言いようがない。
花音はいつも視線を受けていて、人前に居る時には本人も落ち着かないだろうな。いや、逆に視線を受けることに慣れ過ぎていて、そんな落ち着かないという気持ちはないのかもしれないけれど。
あとで家でどうなのか聞いてみようかなと思った。
さて、そうやって進んでいく中で昼ご飯の時期がやってきた。俺は自分で適当に詰めてきた弁当である。おにぎりと簡単なご飯。母さんがいない分、自分で用意するしかなかったのだ。というか、花音も自分で作ってるのだろうか。朝から俺の家にやってきていたけれど、その前に作っていたのだろうか。
と、思っていたら近くの花音の様子が聞こえてきた。花音の様子はすぐに聞こえてくる。
「花音ちゃん、それ自分で作ったの?」
「はい。私は料理が得意でないので簡単なものですが」
「えー、十分だよ」
「そうそう、天道さんの手作り弁当ならどんなものでも食べたいよ!!」
花音はそんな言葉をかけられている。やっぱり自分で作っていたらしい。それにしても花音の料理ならどんなものでもいいとか、俺が花音の料理食べたことあるって知られたら本当にどうなるんだか……とハラハラしてしまう。
「喜一も自分で作ったのか?」
「ああ」
「偉いよな。俺は母さんが作ってくれた」
「母さんは海外だからな」
俺も母さんがいたら母さんに作ってもらったんだがな……、まぁ、それも仕方がないことだろう。ちょっと久しぶりに母さんの料理も食べたくなってきたが、それは母さんたちが日本に帰ってくるまでお預けである。
母さんたち次はいつ帰ってくるかどうか、それも確認しないとな。
昼食の時間が終わってから、俺の玉入れの出番になった。玉入れでは一先ず頑張って沢山入れるように拾って入れるを繰り返した。一つ、二つ、三つと結構沢山入れられた気がする。足が速くない分、こういう所でクラスに貢献出来ているのが嬉しい。
他のクラスよりも多く入れられることが出来たので、玉入れは一位だった。クラスのテントに戻ったら、「大活躍だったね」「お疲れ様」と声をかけてくれた。玉入れば目立つ競技ではないけれど、こうして応援してもらえると頑張って良かったと思った。
その後は俺の競技はもう終わりなので、あとは応援をするだけだ。花音の出番がまだ残っているのでそれはちゃんと見ておかないと。
リレーが行われるのは最後だから、それまで自分のクラスの応援をするか。
幸い俺のチームは今のところ良い調子で得点を重ねている。やっぱりこういう行事だと点数が高い方が楽しいものだ。もちろん、負けても楽しい事には変わりないだろうけど。いい調子だからこの後も頑張ろうとチームのクラスはやる気に満ち溢れていた。あとやっぱり花音の効果だな。花音と同じチームだと皆やる気に満ち溢れているからというのも強いだろうけど。
そして花音の出番であるリレーの番になった。最終競技だというのと、花音や倉敷というこの学年の中でも人気者たちが多く参加しているのもあって、とても盛り上がっていた。
「天道さん、頑張れー」
「達史、ファイト!!」
色んな声が聞こえてくる。
まずは女子生徒のリレーから始まる。うちの高校は男女混合リレーは行わないのだ。さて花音の出番はアンカーなのもあってまだ来ていない。走っている生徒たちよりも、出番を待っている花音に視線が向けられているのもすさまじいことだ。
そんな風に思いながら観戦していれば、花音の出番が来た。やっぱり速い。抜きんでてスピードが速くて、走るフォームも綺麗で、だからこそグラウンド中の皆が注目しているのではと思えるぐらいに視線を向けられていた。
花音が一着でゴールを決めた時は、グラウンド中の盛り上がりが凄かった。同じチームじゃない人達も応援で盛り上がっていた。
その後、男子のリレーが行われたが、走り終えた花音を囲んで盛り上がっていて、視線があまり向けられてなかったのはあー……って気持ちになった。倉敷も折角頑張って一位を取っていたのに花音にも見られていなくてちょっとかわいそうだった。
花音は花音で囲まれていて人の競技見る余裕なかったみたいだし。
リレーが終わった後は閉会式が行われた。俺も久しぶりに体を動かして疲れたので、今日はゆっくり休もう。多分今日も花音がくるだろうから、今日はもう夕飯は買って帰ろうと閉会式の間考えるのだった。
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