体育祭②

 体育祭が始まり、グラウンドは熱気であふれている。



 体育祭は白組、赤組、青組、黒組と分けられている。俺の通う学園は学年ごとに8クラスで、文系と理系で分かれている。それぞれの学年から二組ずつふりわけられ、同じチームのようになっているのだ。ちなみに花音のクラスとも同じチームだった。

 花音と同じチームになったクラスは、俺のクラスも含めてそれはもう盛り上がっていた。

 これだけ影響を与える花音はやっぱり凄いんだなと改めて思ってしまう。




 今、グラウンドで行われているのは二人三脚だ。二人三脚は、一度中学の頃にやったことがあるのだが、その時は散々な結果になった。体育祭以前にちょっと中学でごたごたしていたからもあるが、それもあって二人三脚は参加したくないなと他の競技にしたというのもある。



 それにしてもリズムを合わせて走るのって難しいよな。単純に足が速い人が一着になるわけではなく、パートナーとどれだけ合わせられるかというのに焦点が行く競技だし。そう考えるとうちのクラスは凄く速い。いかにも文系な女子二人がせっせと一着を取っていて、うちのクラスは凄く盛り上がっていた。何でも昔からの親友らしい。やはり仲が良かったりすると、こういうのはあわせやすいのである。



「やった!! 一着、おめでとう!!」



 明知が終わったあと迎え入れてにこにこと笑っている。一着にならなかった人にも「頑張ったね」とにこにこしている。ギスギスしていないクラスは本当に居心地が良いと思う。



 運動が苦手な人でも一生懸命やっているのが分かるので、誰も文句も言わないしな。

 俺も運動が得意ではないから、こういう雰囲気のクラスは本当に助かる。障害物競争と玉入れで俺が出来るだのことはしよう。


 そんなことを考えながら俺は同じチームの人たちを応援していた。



 そうしていれば、100メートル走の番がまわってきた。100メートル走には花音が出るのでちゃんと見ておかないと。見ててほしいと言われたしな。それに同じチームだし、花音の応援をする分には問題ないし、周りに混ざって応援しようと思う。

 ちなみに倉敷も足が速く、100メートル走の選手だ。男子と女子で一緒に走るわけではないが、待機場所は同じようで倉敷が花音に話しかけているのが見えた。




「達史が天道さんと仲良く話してる!!」



 三瓶が声をあげて、それに周りが「大丈夫だよ」「天道さんは~」と慰めている声が聞こえてくる。

 三瓶以外の女子生徒も倉敷が花音に話しかけていることに何か感じている生徒が多いようだ。倉敷はもてるんだなと改めて感じる。あと花音も。



「俺も花音ちゃんと話したい」

「ばっか。お前なんて相手にされるわけねーだろ」

「それにしても花音ちゃん可愛いよな。花音ちゃんに笑顔を向けられるなら俺死んでもいい」

「それは大げさすぎねぇか?」

「いや、大げさなわけあるか!! あの花音ちゃんだぞ」

「まぁ、そうだな。あの天道さんに笑顔向けられたら昇天しそうになるよなぁ」



 花音の笑顔で昇天しそうになる、などと言っているクラスメイトたちに本気か? と思ってしまう。まぁ、こんなことを思ってしまうのは家で花音がいつもにこにこと笑って、笑顔を振りまいているからというのもあるだろうが……。

 本当に昇天する威力だったら俺は何回死んでんだよってことになっているしな。



 そう考えていたら花音が走る番になった。



 なんというか花音の走りって、綺麗なんだよなと思った。走っているフォームが完成されていて、その一つ一つの動作が綺麗というのが相応しくて。他の生徒だって十分に足が速い生徒のはずなのに置き去りにして、一着を取るのは流石としか言いようがなかった。

 花音が一着を取ると、同じチームの生徒達以外からも歓声が上がっていた。



「やっぱり凄いな、天道さん」

「ああ」



 ゆうきの言葉に頷いていると、ちらりと花音がこちらを見た。一瞬だったけど、俺を見ると満足そうに一回頷いた。ちゃんと俺が見ているのかが気になっていたらしい。


 多分、家帰ったら「私、頑張りましたよ!」みたいな感じで満面の笑顔なんだろうなと想像出来た。


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