媚薬その2

 朝、俺はいつも通り目を覚ます。俺の服は強引に破りさかれており、隣に居るアリスは生まれたままの姿で眠っている。


「ははっ…もうやめよう…」


 二度とアリスに媚薬は飲ませない。昨日そう誓った。


………

……



「うぇへへへぇ、しょら〜」


 あっれぇぇえぇぇぇぇ!?こういうのって1日経つと治るもんじゃないのかなぁ!?なんで治ってないのかなぁアリスさん!?


「アリスてめぇ!なんで治ってねぇんだよ!」

「治る〜?何が〜?」


 こりゃ予想外だ!!1日明けりゃ大体のことは解決してるってのがテンプレなのに、アリスはなんで治ってないんだよ!あの媚薬効果ありすぎだろ!!

 しかも今日必修のテストなんだけど!?この状態のアリスを学校に連れてけと!?

 確実な事件になんだろうが!!


「アリスゥ!!頼むから治ってくれぇ!!」


………

……


「はぁ…」

「おう空ぁ、どうしたぁ?テスト自信ねぇのか?それともアリスちゃんに振られた?」


 和人がそう言って来る。テストはまぁ自己採点で80点は超えているので問題は無いだろう。だけど、アリス関連なのは間違ってない。


「和人、恋人が媚薬飲んで壊れたらどうしたらいいと思う?」


「はい?」


 訳がわからないと言った風に首を傾げるが、わりとマジの問題なのだ。教室が違うから今は離れているから無事だが、この後はマジで俺の貞操がヤバいことになる。


「ま、まさか…アリスちゃんが…?」


「そういうことだ…」


 察しが良かった和人はそれを理解すると、俺の首に両手を回し、割と強い力で締め付けて来ると同時に、血眼を作って俺に叫んだ。


「てんめぇなんっつう羨ましいマネしてくるとんじゃゴラァァ!!そういうことかぁ!!昨日アリスちゃんが休んだのはそういうことかぁ!!!」


「間違ってないので否定できん…」


「貴様ぁあああああ!!大学はなぁ!大学はなぁ!!お前らみたいにキャッキャウフフするとこじゃねぇんだよおぉ!!高校よりもより質が高い勉学に励むためだろうがああああああ!!!なのになんでテメェは!テメェって奴はぁ!!」


 ぐわんぐわんと俺の首を揺さぶってくる彼女いないイコール年齢の和人。いや…本当に申し訳ない。和人の言い分は何一つ間違ってないし。

 そう思った時だった。教室の扉が大きく開かれる。


「空〜〜!家帰ってイチャイチャしよ〜!!」


 いつも通りの言葉であったけど、その目は飢えた野獣の様な目をしており、このまま直帰したら間違いなく喰われてしまうだろうと直感させる。


「か、和人…今度昼飯奢ってやる。焼肉と寿司以外なら奢ってやるから!じゃ!!」


 そう言い残して和人の腕を外し、カバンを持ってアリスと共に教室を出るのだった。


………

……


(なんで…なんでぇ…!?なんでこうなってるのぉぉぉぉおおぉぉ!?)


 気が付いたら、私は家の玄関で空の背中に胸を押しつける形で抱き付いていた。そして、さっき、というより昨日の記憶がだんだんと頭に流れ込んでくる。


(は、はわわわわわっ…私ってば…空に…なんてこと…!!)


 欲望のままに何度も求めて、結局は朝までしてしまった。そして今日の今頃までとんでもないことをしてしまった。空に迷惑をかけた。


(ど、どうしよう…空に合わせる顔がない…よし…!こうなったら…!!)


 明日の朝までさっきのを貫こう!!そして朝になって記憶が戻ったフリすれば…!!


(オールオッケー…完全犯罪でござるな)


 ヤダ私ってば天才!そうよそうよ!!空にバレなければ問題ないの!!

 だから今は…。


「空〜、一緒にお風呂入ろ〜?」


「入らねぇよ。まだ4時だぞ」


 くっふぅ!!私の欲望だけど…欲望だけども!わかってて言葉に出すの恥ずかしすぎる!!


(ん?待てよ…今なら欲望のままに空に蹂躙して良い?)


 恥ずかしさもそんなの関係なしに空を求めて良い。それを知った私はプッツンと理性が切れる音がした。


「じゃあ空〜、私の事好き?」


「この世で1番と断言できるレベルで好きだぞ」


…やば…分かってたけど…分かってたけど…ニヤニヤしちゃう!!


「ふふふぅ〜、う、嬉しいなぁ」


 その動揺を隠すために空の頬と私の頬を合わせてスリスリする。


「……なぁアリス、キスして良いか?」

「…ふぇ?」


 キス?キスって…いや、良いけども、いきなりどうしたのだろうか。ムードも無しにそれをやるのは私の役目であって、空がやるのは結構珍しい様な気がする。


「……いい…よ?」


 その後、空は私を玄関の壁に押し付けて逃げられない様にしたあと、私と唇を合わせた。そして、貪る様に舌を絡ませて来る。


「んっ、んっむ…空…」


 ヤバイ…今の空…狼になってる。


(理性が…飛ぶ…。)


そう思った瞬間、空は唇を離した。


「やっぱ媚薬解けてるな」


「あ、あれぇ…?バレてる…?」


「帰宅した時少しおかしいと思ってたんだよ。で?どうだ?媚薬なしでやってた自分の演技が演技だとバレた気分は」


 私はさっき空にやった行動を思い出し、顔を赤くした。


「そ、そそ、それはっ…!!」


 私が動揺するたびに空はだんだん笑顔になっていく。その笑顔が太陽の様な優しい笑みではなく、悪魔の様な笑みだった。だけど、最終的には私の頭を撫でた。


「やっぱアリスは素でも媚薬飲んだ状態でも可愛いな」



プッツン…



あ、これヤバイ奴だ。


私はその後、空とイチャコラしたのは、また後のお話。

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