下着の多様性(2)

「うわぁ……スベスベだね」


「でしょ? それ、すごく穿き心地がいいんだよ」


「生地にナイロンを使っているからかな。手触りがすごくいいと思う」


「うんうん」


 ミオが笑顔でうなずく。


 渡されたショーツを手に取って、生地を触って、両手で拡げてみて、俺は「ものすごく小さい」という感想を抱いた。


 子供用の下着だからこういうサイズなのだろうが、その子供用にしてはセクシーすぎる。


 サイズもさることながら、何しろ全体的に布面積が小さいのだ。これではお尻を隠しきることなんて到底できっこない。


 これをミオが穿いているところを想像したら……いかん、のぼせ上がって鼻血が出そうだ。


 穿いている本人が一番気に入っているんだからいいとは言え、施設の園長先生は、こんなにきわどい下着を買い与える事に、何のためらいも抱かなかったのだろうか。


 そのあたりについて、ミオは何か知っているのかな。それとなく聞いてみよう。


「ミオ、このショーツだけど……」


「いいでしょ。ボクがおねだりして買ってもらったんだよ」


「え? おねだり?」


「うん。園長先生がね、ときどき服とかショーツが載ってるカタログを持ってきて、『どれが欲しい?』って聞くの。だからボク、これが欲しいっておねだりしたんだ」


「これを?」


「そ。これだけじゃなくて、ショーツは全部ボクが選んだものを買ってくれたよ」


 俺は呆気に取られてしまった。


 何と、園長先生の趣味か何かだと思っていた下着のラインナップは、誰あろう、ミオ本人のチョイスだったというのだ。


 さっき「下着は全部園長先生が買ってくれた」とは聞いたが、その全てが本人の希望した結果の産物であったとは。


「……ところでこれ、女の子が穿く下着だってのは教えてもらったの?」


「んーん、知らなぁい」


 ミオはあっけらかんと答えた。


 この返事から察するに、ミオは下着の性別がどうこうよりも、それがかわいいデザインか否かで下着選びをしたのだろう。


 それ自体は決して悪い事ではないし、むしろ無頓着であるよりは、何かしら好みを持っている今の方がいいような気がする。


 とは言え、である。


 今時の男の子は、みんな女ものの下着を穿くことに抵抗がないのだろうか?


 いや、みんなは言いすぎか。


 ただ少なくとも、今、嬉々として自分の下着を紹介してくれるミオには、その抵抗らしきものが全く無いようだ。


 これも時代の変化というものなのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る