無射

9月9日□菊の綿

き:銀蜻蜒ぎんやんま

く:草かげろうを

の:野に残し

わ:渡りの蝶は

た:立つ 毒にあき



【雑記】

 重陽の節供です。和歌に相応しい日ではあるのですが、頭文字に据えたい行事ではありません……「よ・う・よ・う」なんて始まり方、難しいに決まってます!

 という訳で、何とか逃げたいと、菊の着綿に致しました。無病息災を願うものですから、今年は特に多くの方の願いでもあるでしょう、と言い訳します。


 蝶も不死性を見ることのある対象。

 現代感覚では蝶は蜜を求めて飛び回るので、婚礼参列の振袖文様に相応しくない、と仰る方もお見かけしますが。蛹に死を見た昔の人にとっては、蘇りや輪廻、そして命の方が強い印象でしたのでしょう。

 でも、それもまた比較的、武家的な時代の感覚と聞いたことがあります。

 宮廷文化では一時期、唐に倣って蝶を鑑賞したそうです。舞や有職文様に蝶があるのはやはり何より独特の美しさ故ではないでしょうか。

 武家が蝶文を引き継ぐには理由が必要だったのかしら、等とも想像を巡らせます。蜻蛉とんぼは武具に描かせ易いですが、武士が蝶を身に帯びるには「言い訳」も必要そうです。


 歌ではアサギマダラを念頭に置きました。

 秋の七草、藤袴に雄がやって来ます。雑亜種の藤袴をベランダで咲かせていた時は偶に我が家にも寄り道してくれました。今の気候では暑過ぎて、この時期はもっと北ですが。

 因みに、古くは「蘭」と書かれた藤袴はキク科です。古典を遡ると科学的にややこしいですね(笑)


 薬玉を飾られた方は今日から茱萸袋。

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