速報:サムライナイン新曲フル(4分23秒)今夜MPNで初公開

ちぃこ

第1話


 顔の良い男とは、友達でいる方がいい。

 これは妹と盛り上がった恋の話の延長線上で出来上がったアイドルヲタクの持論だ。


 見た目が並かそれ以下のヲタクの私からしたら、イケメン彼氏なんて一緒にいても落ち着かない。

 他の女に略奪されたらどうしよう、とかハラハラしっぱなしなんて絶対無理。


 うっかり好きになろうもんなら、周りの女達との駆け引きでは負けられないし、大概見た目が良い男は見た目の良い女に行くので(決めつけに近いけど、今までそうだったもんね)、ほぼ確実にフラれます。はい、傷付く。


 だから顔の良い男というのは眺めて、たまに遊ぶ時に隣を歩ける程度がちょうどいい。


 逃げ腰すぎる?


 いやいや、自分が傷付かない為の自衛対策だから。

 アイドルのスキャンダルやイケメンの先輩に彼女が出来る度に人知れず傷付いてきた経験を活かさなければ。

 惚れっぽくても簡単に好きにならなければ、良好な関係を保てると今まで散々学んできたんだから。


 そんな私には顔の良い男友達がひとりだけいる。


 中学の同級生のシゲ。

 一度、席が前後になった縁で仲良くなって、社会人になった今でもご飯や飲みに行ったりしている。

 勿論、2人ではなく中学の友達や妹達と複数で。

 絶対に2人では会わないと決めている。

 これもうっかり好きにならない為の対策だ。


 今日は私と妹のハル、シゲとシゲの妹のミカの4人でご飯を食べに行った。

 妹2人は同級生ということもあって仲が良いので、4人でご飯というのは珍しい話ではなかった。


「男女間の友情って成立すると思う?」


 この質問の背景には、ミカがずっと幼馴染に片想いをしていることが関係している。

 高校生という若さ故に恋の話が多く、今日もほぼほぼミカはその話だった。


 男女間の友情は成立するのか。


 これまで地球上で何度この議論が交わされてきたのだろう。

 そして交わした人達の中での答えはどうなったのか。私には知る由もないけれど、恐らくこの質問に正解はない。


 何故なら人によるから。


 しかしそれをここで言うのは正解ではない。

 ミカの気持ちを考えると、「成立しない」と答えた方がいい気がする。

 今、ミカは少し気弱になっているようだった。ここは背中を押してあげたい。


「成立しな……」


「成立すると思う」


 ぎょっとして振り返ると、シゲだった。

 悪びれもせずにスッパリ言ってのけやがった。

 やっぱり?と肩を落とすミカ。

 お前は今まで誰の何の話を聞いてきたんだと言いたくもなったけれど、私は私の意見を言わせてもらおう。


「私は成立しないと思う」


 ぱぁっと明るくなるミカの表情に少し安堵した。

 お前、余計なことを言うなよと念を込めて私はシゲを睨む。


「大丈夫、成立しない!普段仲良い分、意識するようになったら突然始まるから!男女間に友情はないっ!」


「……それ言ったら俺らの関係って何なの」


 思わぬシゲの一言に空気が固まった。


「姉貴達は成立しちゃってるもんね、友情」


 それまで黙っていたハルがバッサリと言った。


「確かにシゲ兄の言うとおりだよねぇ」


 そう言ってミカはうなだれてしまった。


 返す言葉が思い付かない私は、曇った空に「あっ、流れ星かも!」とはしゃぐことしか出来なかった。


 この何気ないやり取りが、後に私の持論の軸を狂わせるだなんて、この時は思っていなかった。

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