第3話
みなばらばらに離れて座っているので、友人とか親族ではないように思えました。
振り返ってみましたが、私よりも後ろの席には誰も座っていません。
その三人が私よりも前の席に座っているのに、何故その容姿がはっきりと見て取れたのかと言いますと、三人とも時折通路側に顔を突き出して、後ろを振り返ったからです。
後ろには私が一人座っていますが、私のほうを見ているわけではありません。
通路の奥、バスの真後ろ辺りをじっと見るのです。
そこには誰もいませんし、なにかあるわけでもないのに、まるでなにか大切なものでもあるかのような目で、一点を凝視しているのです。
私が三人と目が合うことのないお見合いを交互にしていると、何の案内もアナウンスもないまま、バスが停まりました。
見ればずっと細かった山道がそこだけ広くなっており、そこにはバス停が存在していました。
しかしバス停には、誰の姿も確認できません。
――誰か降りるのかしら。
私が三人を見ていると、運転席横の降り口ではなく、私の前にある乗り口の扉が開きました。
そのとき何か強い臭いが漂ってきて、私の鼻を突いたのです。
――血?
それは血の臭いでした。
私が「なんで?」と考えていますと、バス停には誰もいなかったはずなのに、誰かが乗り込んできました。
老婆でした。
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