あのバス停を降りたときに
ツヨシ
第1話
その当時、私は、少しばかり残念なことに、けっこう田舎にある小さな会社に勤めておりました。
平凡でしがない一人のOLとして。
そしてその私が住んでいた所はと言いますと、さらに残念なことに、会社以上に田舎な場所に住んでいたのです。
そんな事情もありまして、会社も私の家も駅と言うものが近くにはありませんでした。
しかし幸いなことに、本数は少ないのですが一本のバスが運営されていて、会社も私の家もその路線の近くにあり、バス停留所もそう離れてはいませんでした。
車はおろか免許すら持たない私は、必然的にそのバスで通勤していました。
そしてそれが二年ばかり続いたある日のことです。
その日私は、業務が終わるといつものようにバス停にむかい、いつものようにやって来たバスに乗り、いつものようにやや後方の席に座り、そしていつものように眠りについたのです。
普段の私であれば、自分の降りるべきバス停が近づいてくると、自然に目が覚めていました。
毎日同じバスに乗り続けたために習得することが出来た技です。
しかしその日はそうではありませんでした。目が覚めなかったのです。
その結果私は寝過ごしていまいました。
バスの外には見慣れぬ風景が流れていました。
先ほども言いましたように、私の住んでいるところはけっこうな田舎にあるのですが、山の中と言うわけではありません。
しかし今私の目に映るものは、完全に山の中のものです。
狭く暗い道。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます