只の人間

君は影だと思っていた。

全てを共有し得るものだと思っていた。

傷を隠し合える唯一のものだと思っていた。


私は影だと思っていた。

無条件で傍にいるものだと思っていた。

盲目的に見えない光を見ているだけだった。


君は影ではなかった。

私は影ではなかった。


分かり合えなかった。

傷が増えていた。

過去には戻れなかった。

間違いは正せるか。

これは間違いであったか。


君は何であったか。

私は何であったか。


互いにただの人間であった。

傷を抱えたただの人間であった。




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