国による恋人マッチングシステムを使ったら、選ばれたのは隣の席の大嫌いな女子だった。

新名天生

システムに繋がれた二人

第1話 恋人マッチングシステム


 午後の授業が終わり昼休み教室で弁当を食べているとスマホに一本のメールが届いた。


 俺はそれを見た瞬間驚きの声をあげた。


「「えーーーーーーーーー!」」

 

 クラスの皆が俺ともう一人同時に声を上げた女子を見つめる。

 一瞬の静寂、席から立ち上がった俺と彼女、周りは何事かと思っているだろう。


 だが俺は、彼女が俺と同時に声を上げた理由を知っていた。


 国による恋人マッチングシステムで出された相手は、『月夜野 瑠つきよの るり』同級生にして俺の一番苦手な女の子だった。



◈ ◈ ◈ ◈ ◈



 人口現象、少子高齢化が叫ばれ、さらに若者の恋愛離れに拍車がかかり結婚率20%以下に落ち込んだ昨今、出会いの減少、ストーカー問題から恋愛がめんどくさいと考える様になってしまった若者が大多数に及ぶ。


 しかし、アンケート取るとかなりの割合で恋人は欲しいというチグハグな結果になる。

 そこで国は数年前から恋愛に関するデータを集めそれをAIで分析、ディープラーニングを駆使し理想的な組み合わせを割り出すシステムを開発した。


 実験的に行われた国による恋人マッチングシステム、しかし当初うまくいかなかった。

 人は第一印象で相手を判断してしまう。

 しかし、それはあくまでも一部の判断材料、もっと相手の事を理解しお互いの気持ちを深め合えばその相手は間違いなく理想に近い相手のはず。


 そしてマッチングされた二人は一定期間強制的に別れる事を禁じる法案が可決。

 当初は反対もあったが次々と成功し、婚姻率の増加、そして出生率の増加に繋がって行った。

 これを機にシステムは次々と改良され法律も追加、使用年齢も引き下げられ今年から遂に高校生もこのシステムの対象となった。



◈ ◈ ◈ ◈ ◈



「ちょ、ちょっと来なさい!」

 

「ちょ、俺食べ掛け」


「そんなもん良いから!!」

 俺は食べ掛けの弁当をそのままにして月夜野に腕を引かれ、ザワザワとしているうちのクラスを後にした。


 昼休みはまだ始まったばかり、まだ食事中の者も多く廊下はあまり人がいない、それでも鬼の形相で男を引っ張っていく女子に皆若干引いている……。


 2年の廊下を通り抜け階段を上がり屋上の踊り場へ、勿論アニメじゃあるまいし屋上には出られない、なのでここに来る生徒は、ほぼいない。

 

 月夜野は俺を睨むとスマホの画面を見せた。


『貴女のお相手が決定しました。

五十川 瞬いそかわ しゅん様』


 と、画面トップに俺と同じ名前、以下学校名とアドレスが記載されている。

 うん間違いなく俺だな……。


「ど、ど、どういう事よ!」

 月夜野が閉鎖されている屋上への扉の前に俺を立たせ壁ドンをする。

 か、顔が近い……と、ときめいてなんかいないんだからね!


「うん、まあ、どうもこうも、そのままだなぁ」


「あんたなんでシステムなんて使ってるのよ!! 変態!」


「うん、まあ、それおまいう? ってそのまま言い返しておくわ」


「誰が変態よ!」


「いや、そっちが先に言ったんだけど?」

 自分から先に言ってるのに……しかしこれはいつもの事、俺は理不尽な月夜野の口撃を冷静に交わして行く。


「女は良いのよ!」


「いや、女子だけじゃシステムの意味無いじゃん」

 百合か? 百合なのか? やっぱり百合なのか?


「うわ、キモ……マッチング使わなきゃ彼女も作れないとか」


「いや、だからそれも、おまいう?」

 本当理不尽にも程がある……まあ、月夜野の理不尽な態度、言動は今に始まった話じゃない。

 

 そう……俺は1年の頃から彼女のこの理不尽な言動や暴言に耐えていた。


「うるさい! 私は良いのよ、仕方なくなんだから!!」


「仕方なくって、そりゃ誰もがそうだろ?」


「ああああああ、最悪、なんでよりによって同じ学校の同じクラスなの?」

 そう言うと月夜野は壁ドン止め、俺から少し離れしゃがみ込んで頭を抱えた……取り敢えずパンツは薄いピンクだった。


「まあ、確率論だと思うけどねえ、アンケで全国からマッチングかけてよりカップリング成立しやすい二人を選別するんだから、遠距離よりも近い方が上手く行くって事だろ」


「近すぎなのよ! なんでよりによって隣の席のあんたなのよ!」

 しゃがみ込んだまま、下から俺を睨み付ける月夜野……よしわかったその態度に免じて、パンツが見えてる事は黙っておこう。


「まあ、そこまでは知らんけど」


「なんであんたはそんなに余裕なのよ……あ、あんたもしかして私の事を!」

 身体を自分の両腕で抱きながら後退りする。


「は?」


「うーーわ、キモ、今までそういう目で私の事見てたんだ、キモ」


「うっせ、お前なんか見てねえよ……」


「お前なんかって何よ!」


「ああ、もう、いっとくけどショックなのはこっちも同じだからな! 本当に成功率90%なのかあのシステム? ぜってえ盛ってるだろ」

 俺は大人しい娘が好きなんだ、尽くしてくれるタイプって言うの? エ○ァで言うと綾○タイプ? いくら可愛くてもこんなギャーギャーうるせえア〇カみてえな奴とかごめんだね。


「じゃあどうすんのよ!」


「人の人生掛かってるんだキャンセルとかできんべ?」


「――――あんたバカ?……規約も読んでないの?」


「…………へ?」


 

 マッチングシステムとは俺らが使っている別称で正式名は『少子高齢化対策国民恋人適合システム』という。

 人口減少に歯止めを掛けるべく、国が本格的に国民の恋愛に関与してきた。

 国家の存亡に関わる問題としてかなりの予算を掛け、法律も整備され今では当たり前の恋愛方法となっている。

 俺は中学からモテなかったし、恐らく高校でも彼女は出来ないだろう……そしてその予想通り高校1年では彼女は無し、このまま彼女の出来ぬまま高校時代を過ごすのは本意ではないと、今年度から高校生にも使える様になったマッチングシステムを軽い気持ちで利用した。


 以前は役所に行って必要な申請書を提出していたらしいが、今はスマホにて簡単に登録出来る。

 18才未満は親の承諾も貰わなければいけないが、それもスマホにて簡単に行える。


 登録をした後、質問形式で必要事項を入力していく。これもゲーム感覚で行え、自分の好みや自分自身の事を入力していった。


 最後に顔写真、全身写真をスマホで撮影それを送信して登録は全て終了、それを元に全国からAIにて自分の相手を決めて貰うというシステムで、なんとカップリング成功率は驚異の90%を越える結果となっている……らしい。

  

「うせやろ……」

 俺は取説とかあまり読まないタイプなので、このシステムの規約なんかはさっと流して利用したんだけど……さっき、月夜野に言われてキャンセル出来るかの項目を授業中にこそっと読んだが……。


「キャンセルどころか……最悪懲役? マジか……」

 俺はとんでもない物に手を出してしまっていた。



 【あとがき】

 フォロー、★レビュー、♥エピソードに応援ありがとうございます。

引き続き応援よろしくお願いいたします。

特に★レビューをよろしくお願いいたします。


現在他にも作品更新中です。

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884994656

妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ。

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054885906659

義理の妹が彼氏の僕を女装させイチャイチャしてくる。

こちらも合わせてよろしくお願いいたします。

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