013.過ごす時間により縮まる距離
魔道学の座学は本で読んだことの復習といった感じで、特に目新しいことは今のところない。
結局センス!と言われてしまっている学問だから、座学の知識が増えることはないのかも知れないなー。
そんな風に思いながらも、今日も図書室で魔力関連の本を読んでいた。
「ご機嫌よう、ミチル様。」
名前を呼ばれて顔を上げると、デネブ先生がいつものように艶やかに微笑んでいた。
美熟女来た!
今日も美しいなー。ほれぼれするよー。
「ご機嫌よう、デネブ先生。」
先生は私が読んでいる本の中身をちら、と見ると、二度ほど頷いた。
「ミチル様は勉強熱心ですわね。教える身としては大変嬉しく思いますわ。」
「まだまだ分からないことばかりですが、知ること全てが新鮮で、学ぶことが楽しくて仕方ありません。」
本当に、楽しくて仕方がないのだ。
同じような文章なのに、著者を変えて同じような内容を読んだりしている。
筆者によって、文章の表現の仕方が若干異なるのは、適性というものに影響を受けるからかも知れない。
今は、ちょっと前から、何故魔力を持たない人の子供が魔力が多いのか、というのが気になっていて、その辺に関する本を読んでいる。
魔力がないのに、次世代は持っている。
そして平民の魔力持ちは遺伝しない不思議。
魔力の器の場所が本によって心臓のあたりだったり、おへその上あたりだったり、図解として適当だ。
その辺、ということなんだろうけど。
なんだかそれが、気持ち悪い。
ちゃんと統一して描けよ、とか思ってしまう。
思わずそれをデネブ先生に話すと、先生は興味深いことを言った。
人によっては心臓のあたりだったり、右の肺のあたりだったり、おへその上あたりだったりと、若干のズレはあるものの、大体そのへんにそれぞれの魔力の器があり、そこに測定する魔道具を近付けると反応するので、魔力を目覚めさせる儀式を行うのだと。
人によって、器の場所が違う。
「例えばの話ですが、実はおへその下辺りに器がある人はいないのでしょうか?女性であれば子宮などがある場所にある為、生まれた子供が魔力が多いとか…。」
私の突拍子もない話に、デネブ先生はぎょっとしたかと思ったら、口元に手をあてて、小さく呟き始めた。
何か考えているようで、私のことはすっかり頭から消されたっぽい。
さすが研究者!
「…あの、先生…?」
呼びかけると、先生はハッとしてこちらを向いた。
「ミチル様、もしかしたら今の内容は、魔道学界を大きく揺るがす内容かも知れません。他言は無用ですよ?」
すごい真剣な顔で言うものだから、思わず私も真顔で頷く。
調べたいことがありますから、失礼しますわ、と言って先生は足早に去って行った。
何だろう。
私のおかしな話を聞いて、何か気付いたのだろうか?
魔道学界を揺るがすとか何とか言ってたけど、まさかなー。
とは言え、私の言った何かでデネブ先生が何かを閃いたのなら、嬉しい。
さて、さっきの私の突拍子もない話でいくと、平民の魔力持ちが、私たちと同じように心臓のあたりで魔力が発見されるとするなら、この仮定は崩れる。
生殖器と器の距離により、次世代の魔導値に干渉するのか、それとも、生殖器近辺に器があるから、次世代に影響するのか。
我ながら突拍子もないけど、こういう仮説とかも楽しいよね。
*****
アルト家に招待された。多分、馬だと思う。
父親も来たがったが、侯爵からただのお茶会だからとやんわり断られていた。
あの駄目父は、侯爵の信頼を1ミリも得られていなさそうだ。
脳筋気味な父と、論理派のアルト侯爵がかすることは永遠にない気もする。
侯爵邸にお邪魔すると、ルシアンがいつもとは違った。
何が違うって、服装だ!
いつもは制服なのでブレザーなのだが、今日はお貴族様らしい品の良い格好です!
白いシャツにリボンタイ。
腰の辺りにゆったり巻かれた絹の帯が、ルシアンが動くと揺れて、優雅さを醸す。
「ようこそ、ミチル様。」
笑顔で迎えられて、心臓がばくばくする。
大分見慣れたと思っていたけど、重ね重ね、イケメンだった。しかもかなりハイレベルの。
私服の耐性がまだ出来ていない為、ちょっと刺激が強すぎる!
とは言え、いつもいつも顔を真っ赤にしていては、淑女たるもの、いかんので、平静を装う。
長い廊下を歩きながら、馬車でどれぐらいかかったかなどを話した。
アレクサンドリア家からアルト家は、実はそんなに遠くない。隣の領だからだ。
とは言え、土地の特性がまったく違う為、税収は倍は違うと聞いたことがあるが、それは単純な耕作量だけではなく、脳筋なうちの父には思いつかないような施策をアルト侯爵はなさっているのだろうと思う。
アルト家の息子二人は大変優秀だ。
今後も繁栄していくだろうけど、アレクサンドリア家はどうかな。
兄は優秀と言えば優秀だけれど、打算が服を着て歩いているようなものだし、姉は相変わらず私への当たりを強めている。
正直、早く嫁に行って欲しい。
サロンに入ると、侯爵は座って書類を読んでいた。
私に気付くと顔をあげ、にこりと微笑んでくれた。
ルシアンにくっついて、というかルシアンの半歩後ろを歩くようにして侯爵の前に行き、ご挨拶をさせていただく。
「よく来てくれたね、ミチル姫。本来なら出迎えなくてはならない所、こんな状態で失礼するよ。」
アルト侯爵は宰相としての仕事の他に、領主としての仕事もある。
侯爵家ともなれば抱える領地の数は1つや2つではない。
息子たちがその手助けをしたとしても、重要な判断はやはり侯爵でなければ出来ないのだろうから、時間なんていくらあっても足りないだろう。
「ルシアン様にお出迎えいただきましたから、お気になさらないで下さいませ。」
アルト侯爵はふふ、と笑う。この笑い方、親子だなぁ。ルシアンとよく似てる。
侍女が紅茶を持って入って来た。
キームンの香りだ。
前世で言う所の中国茶は、こちらの世界ではかなりの高級品に分類される。
私もたまに飲むけれど、値段が値段なので、気安く飲めない。
頭をすっきりさせたい時なんかには飲む。
「キームンでございますね。」
中国茶の中でも高級な部類に入るキームン。好きなのだが、実は不満に思っていることもある。
これは、中国茶だ。
それなのに、こちらの人たちは紅茶のように入れて飲むのだ。
案の定、お茶の味が強く出すぎてしまっている。
私の表情に一瞬出た違和感に、二人は目敏く気が付いた。
と、言うより、二人とも私と同じことを考えていたのだろうと思う。
アルト侯爵はふぅ、とため息を吐いた。
「以前、ト国からキャラバンが来た時にキームンを飲んで、あまりの美味しさに驚いて茶葉を買ったはいいものの、あの味を再現出来なくてね。入れ方が違うということは分かったのだが、どうやればいいのか分からんのだよ。」
そう言って苦笑する。
ト国とは、うちの国から少し離れた所にある国で、情報だけ見ると、まんま中国だった。
開発者は、国内すらまともに考えてないのだから、周辺諸国のことなんてもっと考えてる訳ない!
そもそも乙女ゲームだしね?
「茶器の部類はご一緒に購入なさらなかったのですか?」
「茶器?あぁ、それならあると思うが、姫は詳しいのかい?」
博識で名高い侯爵が知らないことを、平凡な伯爵家令嬢の私が知ってる、というのはよろしくない。
よろしくないのだけれど、既にアルト侯爵の目が私をロックオンしてる気がする。
いずれ、ルシアンと結婚すれば、遅かれ早かれバレることでもあるのだろうから、出し惜しみしても仕方がないかも知れない。
実家では私のこう言った知識を有効活用してくれるとは思えないが、アルト侯爵ならば、上手く使うだろう。
「知識だけですけれども、少しなら存じております。それでは、茶器と、お湯の入ったポット、茶葉をそれぞれ別でお持ちいただけますでしょうか。」
すぐに用意させよう、と侯爵が背後に控える執事に合図を送ると、執事は頷いて音もなくサロンを出て行った。
「ルシアンから、姫君は色々とご存知だとは伺っていたけれども、茶道の造詣も大変深くていらっしゃるのだね。」
とんでもございません、と答えつつ、ルシアンがアルト侯爵に私のことをどう話しているのかが気になり、ちらり、とルシアンを見る。
ルシアンはそんな私ににっこり微笑み、アルト侯爵がくすくす笑いながら、「ほぼほぼ惚気だね」と言った。
惚気ですと?!
しかも父親にそんな風に茶化されてるのに、顔色変えないルシアンってどういうことなの?!
少しして茶器と茶葉、お湯が執事たちの手によって運び込まれた。
おぉ、茶器がフルセットだ。
しかも器が青磁だ!美しいー!
茶盤と呼ばれる箱の上に、茶壺、茶海、茶杯、聞香杯全てをのせる。
茶壺の蓋を開け、そこにポットのお湯を注ぐ。茶壺に蓋をして、中のお湯を茶海へ、茶海から聞香杯、茶杯へとお湯を移し、最終的には茶盤の下に流し入れる。
「姫、今の動きは茶器を温めているのかい?」
「はい。」
茶壺、一般的なティーポット(かなり小さいけど)に茶葉を、底が隠れるぐらいまで入れると、ポットのお湯を高い位置から注ぎ入れた。
なみなみとお湯を注ぐと、表面に泡のようなものがたつので、それを箸のような棒(茶通し)で撫でて切り、茶壺の蓋をする。
4〜5分経った頃ぐらいで、ポットのお湯を茶壺の上から一回りかけると、熱による圧が茶壺にかかり、茶壺から少しお茶が溢れる。
茶海という、茶葉を越した後のお茶を入れる容器に、茶こしをのせ、茶壺の中のお茶を全て注ぎ入れる。
入れ終わったら、茶壺の蓋は少し開けてずらしておく。
そうしないと茶壺の中のお茶の味が悪くなってしまうのだ。これは緑茶でも一緒だ。最後の一滴まで注ぎ切って、蓋をずらしておくことで、次のお茶も美味しく飲めるようになる。
聞香杯、これは茶葉の香りを楽しむ為だけの容器だ、それに茶海からお茶を注ぎ入れ、蓋のように茶杯を被せたら上下を反対にし、液体は全て茶杯に移す。
聞香杯をアルト侯爵に差し出す。
「香りを、お楽しみ下さい。」
同じようにもう一つ聞香杯に香りを移し、ルシアンに渡す。
「これはまた、清々しい香りだ。」
「すっきりしていますね。」
聞香杯を二人から受け取ると、茶杯を取るように促す。
二人は一口で茶杯の中のお茶を飲む。
アルト侯爵は「あの時と同じ味だ…」と、驚いた顔で呟いた。
キャラバンからお茶を振舞われたのは侯爵だけだったのだろう、ルシアンは驚いた顔はしなかったものの、ほっと息を吐いて、美味しい、と笑顔を向けてくれた。
「上手に入れられるか心配でしたが、お口にあったようで良かったですわ。」
私もキームン茶をいただく。
寮には茶器セットがないから、どうしても上手くいかないのだけれど、さすが、その為の茶器だ。
素人の私でも美味しく入れられている。
茶海が空になったので、また、茶壺にお湯を入れる。
今度は泡は出ないし、もう茶葉は開いているので、30秒ほど蒸らしたら直ぐに茶海に移す。
ひと通りお茶を楽しんだ後、アルト侯爵は背後の執事に覚えたかね?と確認をした。
そうなるだろうと思っていたので、基本通りに丁寧に入れてみた。
執事は頷き、「姫君がとても丁寧に分かりやすく入れて下さいましたから。次はご主人様のお口に合うようなお茶をお入れしたいと思います」と、ニコッと微笑んで言った。
さすがプロっすね!
「姫君のお陰で、頭がスッキリとしたよ。本当にありがとう。」
「恐れ入ります。」
淑女の嗜みとして、茶道は必須ですからね!
ちょっと今回のはその枠を逸脱してた気もしなくもないけど、終わりよければ全て良しですよ!
「ルシアン、そろそろ姫君に私からのプレゼントをお見せして来てくれないか?」
ルシアンは頷き、立ち上がって私に手を差し出した。
その手を取り、私も立ち上がる。
失礼致しますわ、と侯爵におじぎをすると、サロンに入った時より、幾分柔らかくなった笑顔でアルト侯爵は微笑んだ。
「とても、美味しいお茶でした。」
「ありがとうございます。緊張しましたわ、失敗してしまったらどうしよう、と。」
「そんな風には全然見えませんでしたよ?」
いやいや、緊張はしたよ。昔の記憶だからね。
こんな感じだったよなー?って思いながらだったからね!
何故、私が中国式茶器の使い方を知ってるかと言えば、前世で外資系に勤務しており、そこで中国系の人から中国茶の淹れ方を教えてもらったからだ。
いやー、私の前世の記憶、役立たねぇ、って思ってたけど、意外に役立った!
「寮でもキームンを美味しく淹れたいですが、茶器がないので難しそうですよね。」
輸入品としては大変高額だし、私なんかが気分転換に美味しくお茶淹れたいから、って買える代物じゃないもんなぁ。
「…あ、変成術。」
茶器、自分で作ってみればいいんじゃない?!
構成物質が分かれば、やれるんじゃないだろうか?
「それは楽しそうですね。出来ましたら私も参加させていただきたいです、ミチル様。」
協力者がいるのは大変ありがたい。
そういえば、ルシアンの魔導値ってどれぐらいあるんだろう?絶対このテのイケメンは私より上だと思うんですよ。
参加したいと言ってるし、間違いなく基準値の80を超えているのだろう。
頭の良いルシアンが一緒にやってくれたら成功率もアップしそうだ!
馬場に行くと、ルシアンはある一頭の馬に近付いた。
「オージュ。元気だったかい?」
オージュと呼んだ馬の顔を撫でる。馬は嬉しそうだ。
きっと、ルシアンの馬なんだなー。
こういうのにありがちですが、イケメンの愛馬に嫌われて歯を剥き出しにされて威嚇とかされるに違いないので、近付かない。
人のお馬様よりも、私は私の馬との親睦を深めたいのだ!
ルシアンは飼育係と思われる男の人の方を向き、紹介してくれた。
「ライル、こちらはミチル様だ。」
ライルと呼ばれた飼育係は私の方を向くなり、丁寧に挨拶をしてくれた。優しい笑顔だ。
「初めてお目にかかります、ミチル姫様。お会い出来て光栄です。」
光栄だなんてそんな…と私が言うと、ライルはいえいえ、と首を横に振る。
「まさかあのルシアン様に、乗馬をさせようと思わせるなんて、ミチル姫様は凄いお方です。」
「え?」
「ミチル姫様が乗馬を始められたので、ルシアン様も、婚約者として一緒に遠出が出来るようにと、乗馬をお始めになられたのです。」
!
そ、そうなの?!
っていうかこういうのって、本人の目の前でバラしたら、本人にとっては赤面モノなんじゃないのー?!
と、思ってルシアンを見ても、ルシアンの表情に変化はない。
赤くもなってない。当然耳も赤くない。
…なんでよ?
「別に隠しておりませんよ?」
「?!」
ほわっつ?!
「父には、ミチル様が乗馬を始めたから自分も始めたいと言いましたし。」
このイケメン、直球過ぎない?!
むしろその話を聞かされた私のほうが恥ずかしいと申しますか!
これは、アルト侯爵が惚気と言うだけのことはあります!
「ミチル姫様、姫様の為に侯爵様が用意された馬はこちらです。」
いつの間にか奥に行っていたライルさんが、一頭の馬を連れて来てくれた。
グレイの肌、たてがみは白の、美しい馬だ。
こんなキレイな馬を私に?!
真っ黒いつぶらな瞳で私を見下ろす。
「名前はまだないんですよ。是非、姫様が名づけてあげて下さい。」
そっと馬に近付く。威嚇はされない。
でも、じっとこちらを見つめてくる。
馬はとても賢い生き物だ、敏感に色々察知するし、気位の高い馬は人を見下す。
だから、馬鹿にされないように、態度はキリッとしていないといけない。
でも、威嚇してもいけない。
「初めまして。あなたのパートナーのミチルよ。」
まだじっと私を見つめていたが、おもむろに顔を私の頰にこすりつけた。
「姫様のことを気に入ったみたいですよ。」
「良かった!第一印象は大事ですものね。」
そっと手を伸ばして顔に触らせてもらう。
滑らかな肌触りだ。
「あなたの名前を考えたのよ。アレクシスから取って、アレクよ。」
ライルさんは笑顔で頷いて、いい名前です、と褒めてくれた。
ルシアンが私の横に来て、アレクの頰を撫でた。
おお、さすがイケメン、馬に威嚇されないわ。
「ミチル様、私の馬にも会ってあげて下さい。」
「大丈夫でしょうか、ルシアン様に近づくな、って威嚇されたりとかしないでしょうか。」
不安で仕方ない私に、ルシアンはくすくす笑いながら、そんなことありませんよ、と言ったが、心配だ!
恐る恐るルシアンの馬、オージュの前に立つ。
「初めまして、オージュ。私はミチルです。」
オージュもまた、私をじっと見ていたが、威嚇はしてこなかった。良かった!
怒って前足で蹴られたらどうしようかと思ったよ!
今日は乗馬用の服を持ってきていないので乗れない。また近いうちにアレクに会いに来たい!
初めての、私の馬!
馬に飼い葉食べさせたりして、親睦を深めた後、ルシアンに伴われてサロンに戻った。
「あぁ、おかえり。」
アルト侯爵はまだ書類とにらめっこしていた。働き者過ぎるー。
「どうだった?美しい馬だったろう?」
「はい!あんな毛並みの馬、初めて見ました。大人しくて、賢くて、本当に素晴らしい馬です。侯爵様には何とお礼を申し上げていいか…。」
侯爵は笑って、「ルシアンに乗馬を始めさせてくれたことに比べたらこんなこと、お安いご用だよ、姫。」
そんなに嫌がってたのか、ルシアン…。
「ルシアン様は馬がお嫌いだったのですか?」
「馬がと言うより、人前に出るのが嫌でした。今でもそれは大差ありませんが、ミチル様以外はどうでもいいので、気にしてません。」
ぬぁっ!こんなとこでまでそんなこと言って!!
ほら!アルト侯爵が顔をしかめているじゃないか!
訂正させようとしていたところ、アルト侯爵が、「ルシアン、そなた、姫のことをミチル様と呼んでいるのか?」と尋ねた。
えっ、そこ?
「婚約者なのだから、様など付けずに呼べばいいものを。」
「確かにそうですね。」
ルシアンは私の方を向き直ると、「ミチル」と呼んだ。
「はい、ルシアン様。」
「私のことも、ルシアンと。」
脳内では普通にルシアンと呼んではいるものの、ルシアンが私を様付けで呼んでるから、私もそれに合わせていたのだけどね。
「ルシアン。」
ルシアンの表情は変わらなかったが、耳が赤くなった!
なんだなんだ、可愛いぞ、イケメン!
ちょっとからかいたくなっちゃう!
うむうむ、とアルト侯爵が頷いた。あ、そうだった、侯爵もいたんだった。
やばいやばい、ルシアン連呼してからかって遊んじゃうとこだったわー、父親の前で。
その後は夕食にご招待になり、ルシアンと一緒に馬車に乗って寮に帰った。
「それにしても、様を外すだけで、それだけ態度が変わるのは何故なのですか、ミチル。」
「何でしょう。様付けだと距離を感じるのかも知れませんね。他人行儀と申しますか。」
こうやって時間を共にして、色々話していく内に、私はルシアンと過ごすことを自然に思い始めていた。
やっぱり、共に過ごす時間って大事だよね。
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