夢日記
こふる/すずきこふる
8月3日
『8月3日、◯◯県〇〇市の小川付近で身元不明の男性の死体が発見され……』
夏期休暇を利用して帰省する準備をしていたオレは、BGMのように流しっ放しのテレビに目を向けた。
最近、事件が多いな……
耳障りのいい女性キャスターの声は淡々と事件状況を語っていき、現場の映像が流れている。
『死後数週間は過ぎており、警察は調べを進めています』
この間も、林の中で変死体が見つかったとかいう事件があったような気がする。
最近、胸の痛むニュースが続いていた。ただ、それが印象強く残ってしまっているだけかもしれない。
事件の大小問わず、次に流れるニュースも殺人事件や死亡事故ばかりだった。
殺人事件ばかりが目につくというのも中々気が病んでしまう。テレビを消して荷造りに集中すると、口が寂しくなりテーブルに置いていたタバコの箱を手に取る。
「ん?」
もうタバコがない。
数本しか残っていない箱を握りしめ、苛立ったオレは舌打ちをする。
「どうすっかな」
帰省は明日だ。
電車に乗る前に買っても良いが、朝早く出るため面倒くさい感じもする。
時計を見ると、もうそろそろ日を跨ぐ頃合いだ。早く寝ないといけないのに、これからコンビニへ向かうのも億劫だ。
「あぁー……クッソ……」
どうせ実家に帰るだけだ。気張って荷作りする必要はない。
実家に置いてこようと思った荷物は全て放り投げ、ボディバッグに財布とスマホだけを押し込む。
荷物は帰ってきてから宅急便で送ろう。
後で家族に伝えておけばいい。
オレは部屋の鍵を閉めながら、そんな事を考えていた。
近いコンビニでタバコとビールを買い、オレは通り慣れた住宅街を歩いた。
ポツポツと街灯の明かりがついた通りは、車すら通らない。
青く点滅する歩行者信号機が赤く変わり、オレは足を止める。
帰る前に一服してくかな……
目の前に公園が見え、信号機の色が変わると足を進めた。
手頃なベンチに座り、タバコに火を付けると口に咥える。
吸い込む度にタバコの赤い光は蛍のような点滅をした。
「はぁ……」
スマホを取ろうと手を動かした時、手に何かが当たった。
「ん? なんだこれ?」
それは小さなメモ帳だった。どこにでも売っているような小さなリングノート型の物だ。
オレはそれを手に取ると、ポケットからスマホを取り出してライトを当てる。
表紙をめくると日付が書かれている。
毎日記されているわけでもなく、短い文もあれば長いものもあった。
「日記か?」
オレはそう呟きながら、ノートの文を凝視した。
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