巨大ロボット レイワに立つ 前編

08:30 朝礼


玲和レイワ元年、8月30日金曜日、みなさん、おはようございます。」

「「「おはようございまーす」」」

壇上に立つ役職のあると思われる男。


「本日の一言スピーチですが、今日はRay-Oneレイワンの年点検ということで実負荷じつふか演習ですので、手順その他の確認メインでいこうと思います。」


「えー、前回からの変更は装甲値の担当が整備のダメコンから通信のメインオペに

替わりました。須藤さん、ダメかんしっかりお願いします。サブは黒峰さんだからアイテム管理は大丈夫だから。」

「新人の川崎君は今回が初の実負荷ですが、無負荷での練習通りに落ち着いてやれ

ば大丈夫ですから、今回は見て覚えてください。余裕があったら非常事態中の買い出し練習もやってみてね。」

「サブパイロットの長田おさだ君は今回で稼働時間が足りるから、学科の方は大丈夫だと思うけど、ちゃんとコパイロット試験の願書出しといてください。」


「あとはー、りゅう君がおうちの事情でお休みだから、武田アレハンドロ君、今日メインパイロットでお願いします。日本人の若手の皆さんも、しっかり実働積んで免許取るように。」

「仮想敵になってる教導機アグレッサーRay-Zeroレイゼロは山ちゃんとマッさん、何かあったらRay-Twoレイツーは私が乗ります。」



では、通信班から一言お願いします

「通信、須藤です。今回、避難率92%想定ということで、月間目標である“ボタン押す前の指差呼称”を徹底します。装甲値ダメージ管理は無理そうなら早めにサブオペに振ります。」


整備班から

「整備、荒川ッス。月間目標の“使ったものを元の場所に”をダメコン中でも実践して

2機目のスムーズな受け入れをしまッス。労災も防ぎます。」


地上班から

「地上、大木です。月間目標に加え、ノーマルスーツ、酸欠管理、シェルター練習の徹底と、今日に向けての免許取得の励行れいこうで避難誘導員は全員が特殊状況酸欠主任と危険物7種持ちです。」

外野が少しどよめく。

「新要綱のやつ、もう取ったのかよ」とか「全員7種だって」とかそんな感じのことを口々に言っている。


所長からの一言は飛ばします

「今日はプレミアムフライデーということで、ノー残業、定時、ホワイトリスト遵守じゅんしゅ、特殊労災なしになるように打ち合わせ通りしっかりやっていきましょう。」



「それでは、みなさんご安全に!」

「「「ご安全にー」」」



09:17

マッさん「山ちゃんよぉ、今日はちょっとやる気出してもいいらしいぜぇ。」

山ちゃん「マッさん、じゃあこの地形ならやれるな。……はちょっとかわいそうだからから行こう。」

マッさん「久しぶりだな。やるか。」




10:42

メインオペレータ(以下須藤)「C-4に光学、反応あります。えっ、なんでこんなに近くまで??」

サブオペレータ(以下黒峰)「チャコールのヨン、光学、反応あり。C-2からスロープになってるのを狙われましたね。おそらくです。」

須藤「エメラルドの2、射撃、アグニ、インドラ、配達ヨシ!」

須藤「ダメです、チャコールの6が避難未達です。射撃は使えません。」

黒峰「いえ、間に合います。別系統のジャパンの8から射出ベイル……アレハンドロ、合わせて!」

須藤「近接でも切断はダメです。せめて刺突なら……。」



果たして、射出された武器は……アメノヌボコだった。

所長「このタイミングでクサナギでなく、ヌボコを迷いなく出すとは流石ベテランの黒峰くんだな。君さえ良ければ上級指令試験受けるかな?」

黒峰「いえ、私は所長の下で働いているのが気に入ってますから。」


カメ:防衛都市はその性質上、防衛施設に仰角が付いており、“ある程度の高さのもの”が“高速”でやってくることに最適化されている。その裏をかいてメインエンジンを切った上に“通常モード”で姿勢を低くして侵入するという無謀極まる作戦である。

もちろん、通常モードで一撃でも受ければ大破必至だろう。


(しかし、防衛都市の防衛網を文字通りかいくぐる“カメ”か。ちょっとあの2人はやる気出しすぎな気がするが、もし、相手が使ってきたらと思うとめろとも言えん。なんとも難しいところだ。)



11:55 予鈴が鳴る。

マッさん「しめぇーだ。しめぇだ。こっちは大して喰らってねぇから先にへぇんな。」

アレハンドロ「マッさん、ありがとうございます。」

マッさん「いいって、いいって。それよか横でへばってんのなんとかしてやんな。」

長田「うぎゅぅぅう」

山ちゃんはとっくに喫煙所で一服している。



12:00 本鈴が鳴る。

整備(以下荒川)「ダメコン部隊、今から60分ロクジュウ急げぇーっ。」

荒川「膝の動力はここがこうなって…ええっと??」


整備班の長老じみた老人が指示を入れる。

長老「右膝の緑と赤のカスケードをバイパス、高圧免許持ちが保護スーツでやるさよぉ。それから茶色と黒のそれとそれを漏電遮断ころしちゃって。テープ巻いとくさね。」

長老「んで、荒川ぁ、左のオミットなんぼにするさね?」

荒川「長老、あざっす。左は3割減の損耗合わせで68%ロクハチパーでいきます。」

長老は目を細めて微かにうなずくとぷいっとどこかに行ってしまった。



後編に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る