拝啓『氷の騎士とはずれ姫』だったわたしたちへ

八色 鈴

登場人物覚書※読まなくても問題ありません




【王侯貴族について】

※本作では実在の制度とは異なる、オリジナル設定が多々あります。敬称などは作者による造語です。

色々と細かく設定してはいますが、ふわっと読んでいただいて問題ありません。


◆王族

国王→カインストル

王妃→クィニア

王子→プリンストル

王女→プリンシア


姓は『ラ・シルフィリア』


◆貴族・騎士

公爵→クルード  公爵夫人→クルーダ

侯爵→マルク   侯爵夫人→マルカ

伯爵→アルト   伯爵夫人→アルタ

子爵→ヴィアルト 子爵夫人→ヴィアルタ

男爵→ブレン   男爵夫人→ブレナ

騎士→キャバリス

準騎士→ヴィ・キャバリス


※騎士は準貴族、準騎士は平民と準貴族の中間のような扱いです。ただし貴族であり騎士or準騎士の場合、称号はより高位の身分の方が優先されます。


男爵以上は姓の初めに『ディ』という貴族称号を冠する。


◆各敬称

未婚の貴婦人→ディエラ

既婚の貴婦人→ファナム

騎士→ステア

貴族男性に対する敬称→ディエレ


(貴族以外の)未婚女性→フェナ

(貴族以外の)既婚女性→フェレナ

(貴族以外の)男性→ファード



【使用人について】


◆メイド頭

家政婦、ハウスキーパーに該当する職業。女性使用人の中で最高位に位置する上級使用人。他の使用人、及び主人一家から『フェレナ+姓』と敬称を付けて呼ばれる。


◆侍女

女主人、及び令嬢の身の回りの世話をする。メイド頭と同じく上級使用人だが、メイド頭の支配下にない特別な地位。女主人や令嬢たちからはファーストネームで呼ばれることが多く、使用人たちからは『ディエラ+名』及び『ファナム+名』と敬称を付けて、淑女として扱われる。


◆執事

使用人の中で最高位に位置する上級使用人。家令と執事を混ぜたような設定。他の使用人、及び主人一家からは『ファード+姓』で呼ばれる。


◆メイド

部屋メイド→部屋の清掃、ベッドメイキングなどを担当。

給仕メイド→接客、及び給仕を担当。容姿端麗な者が選ばれる。

厨房メイド→キッチンで料理人の補佐を行う

皿洗いメイド→メイドの中で一番下っ端が就く仕事。皿洗い専門。

ナーシー→子守。乳母として子供の面倒を見ていた女性が、引き続き子守として面倒を見ることが多い。

家庭教師→子守の手を離れる時期(作中では大体九歳前後)から世話を引き継ぎ、マナーや礼儀作法、勉強などを教える役割。主人と雇用関係にはあるものの、厳密には使用人ではないため、その立場に応じた敬称が付けられ、他の使用人たちからも上の存在として扱われる。婚期を逃した貴婦人、貴族の未亡人、及び中流階級の女性が就くことの多い仕事。


◆下女

(作中ではメイドより更に下の地位として扱っています)

洗濯婦→洗濯専門の下女

雑役下女→色々な雑事をこなす下女


【騎士団について】


王宮騎士団の他、国防の要である地に騎士団が配備されている。

漆黒の騎士服を身に纏い、階級により飾緒、ボタン、肩章の色が変わる。


騎士団長→金

正騎士→銀

準騎士→銅

従士→青

見習い騎士→青(但し従士と違い、飾緒や肩章はなし)


【登場人物】


◆ジュリエット・ディ・グレンウォルシャー(16)

本作のヒロイン。

フォーリンゲン子爵のひとり娘。

豊かな土地と葡萄農園を持つ資産家貴族の両親に可愛がられ、のどかな田舎町で近所の子供たちと追いかけっこをするなど、のびのびと育った。

貴族令嬢にしてはかなり活発な子供時代を過ごしたが、四歳までは病弱で、身体を壊すことも頻繁にあった。

十六歳の誕生日を迎えてしばらく経ち、自身の前世がリデルであることや、女神の力によって転生したことを思い出す。

転生とはいうものの、本来の『まったく新しい人生を得る』ものとは違い、本来の身体の持ち主であった『ジュリエット』から身体を譲り受けた形となる。(その際「大事にしてね」という幼い少女の声を聞いている)

女神は四歳までの記憶も補完した上で、『リデル』の記憶を一旦忘れさせた。

そのため自身に前世があることや、四歳になるまで自分の身体に別の魂が宿っていたことを思い出すことなく、純粋に『ジュリエット』として生活してきた。

しかし女神の仕事が雑だったせいか唐突に全てを思い出し、色々な偶然が重なって前世で夫だったオスカーや、娘のエミリアと再会する。

前世を思い出したのが最近であるため、性格はリデルの記憶が蘇る前とあまり変わらない。

そのため、大人しく物静かだったリデルの人格の影響はほとんど受けておらず、前世と今は別だと割り切ろうとする。

しかしどうしても前世の記憶に引きずられ、特にオスカーの前だと弱腰になることも。

《癖のない焦げ茶色の髪に、丸っこいチョコレート色の目。深窓の令嬢と表現するには、その肌は若干日焼けして健康的な色に染まっている。美人というより愛嬌がある、可愛い顔立ち》



◆リデル・ラ・シルフィリア(享年17)

本作のヒロインであるジュリエットの前世。

優秀な兄や姉の影に隠れるようにしてひっそりと生きており、『王家のはずれ姫』と揶揄される。

身体が弱く、人が大勢いる場所が苦手で、離宮で生活する日々を送っていた。

家族からは愛されていたものの、貴族たちからは白い目で見られることも多く、人目を極端に恐れる引っ込み思案な性格に。

十四歳の時、姉の結婚式で倒れたところを助けてくれたオスカーに片想い。後に父のはからいによってオスカーの妻となり、臣籍降下する。

彼の妻として相応しくありたいと色々努力するが、そのすべては空回りしてしまう。

更に自身が彼に望まれていない妻だったと知り、不遇な結婚生活を送る。

十七歳の時、オスカーとの間にひとり娘のエミリアを授かるが、ほとんど関わりのないまま療養という名目で別荘へ移り住むことに。

しかし別荘へ向かう道中、野盗に襲われ自害。

(その後、四歳のジュリエットから身体を譲り受ける形で転生するが、それから十二年もの間、一度も前世を思い出すことはなかった)

読書好きで物静かな少女。白い薔薇の花が好き。オスカーから初めてもらった贈り物である、綺麗な装丁の本を宝物のように大事にしている。その本に出てくる姫君の名前を、そのまま娘に名付けるほどに。

結婚後はリデル・ラ・シルフィリア・ディ・アーリングを名乗っていた。

《濃い紫のドレスが真珠のように白い肌を引き立て、小さなダイヤモンドを鏤めたティアラが、銀の髪をより神秘的に煌めかせている。細い手も首筋もガラス細工のような儚さで、少しでも強く触れればたちまち壊れてしまいそうな印象だった。まるで月の化身だ》


◆オスカー・ディ・アーリング(31)

本作のヒーローで、リデルの夫。リデルより二歳年上。

アッシェン伯爵として、国防の要である広大なアッシェン領を治めている。

十六歳の時、自身が先代アッシェン伯である父と正妻の間に産まれた嫡子でなく、父が身分の低い農民女性に産ませた子であったことを知る。

衝撃を受けたものの、母だと思っていた女性から冷遇されていたこともあり、心のどこかで納得する気持ちもあった。

産みの母のことは彼女が亡くなってからも長らく、単なる乳母であり子守だと思っていたが、この人が実の母であればと思うほどに慕っていた。

同じく十六歳の時に騎士の叙任を受ける。

同期の中では最年少で叙任されていること、また王からも一目置かれる特殊な家柄により、妬み嫉みを買うことも多々あった。

王家の第一王女であるイヴリンの結婚式において警護の任につき、そこでリデルに一目惚れ。

当初は忘れようとしたものの、彼女を妻にしたいと思うほど恋い焦がれ、十七歳の時、王にリデルの降嫁を懇願する。

王は、『一年以内にオルディア山脈における異民族との紛争を収めること』という条件を出し、承諾。

補佐官として現地へ赴き、見事紛争を収めたオスカーはその功績により、晴れてリデルを娶れることとなった。

しかしその結婚生活の中で彼は数多の間違いを犯し、最愛の妻を最悪の形でなくしてしまう結果となる。

妻を亡くしてからは、ひとり娘のエミリアを過保護なまでに守り育てていた。

リデルがいなくなり、ジュリエットが現れるまでの十二年の空白の間に何らかの事情があって左目を失っている。

エミリアの乳母が描いた、赤子の頃のエミリアを抱くリデルの肖像画をペンダントのロケットに入れ、常に身に着けている。

《漆黒の髪に、同じく漆黒の騎士服。腰に佩いた剣までが黒い鞘で覆われている中、冴え冴えとした冬色の目がことさらに際立っていた》


◆エミリア・ディ・アーリング(12)

リデルとオスカーの間に生まれたひとり娘。

リデル十七歳、オスカー十九歳の時に誕生。

大勢の使用人たちに囲まれて育つが、過保護な父によって行動を極端に制限される。そのため、友人と呼べる相手がひとりもいないことに不満を覚えている。

(心を許せる数少ない人間として給仕メイドのロージーがいるが、基本的には主人の娘とメイドとして一定の線引きをしているため、純粋に友人とは呼べない)

初対面でジュリエットのことを気に入り、友人になりたいと考えるが、財産狙いと決めつけた父によって妨害され、怒る。

年の割には大人びた言動が目立ち、父に反抗することもしばしば。しかし父が本気で怒ったら、到底太刀打ちできないとも思っている。

いっぽうで子供らしい一面も持ち合わせており、幼さゆえの考えの甘さからつい間違った方向へ突っ走ってしまうことも。

父のオスカーからはかなり甘やかされているが、その割にはまっすぐに育ち、自分の非をすぐに認める素直な性格に。更に他者を庇い、気遣うような優しさも持っている。

苦手な食べ物はセロリ。

よく父親似と言われるが、侍女長のミーナいわく「色は父親似だが、顔立ちはリデルによく似ている」とのこと。

《オスカーと同じ、冬色の瞳。長く伸ばした黒髪はふたつにわけ、側頭部できっちりと結い上げリボンで飾っている。肌は抜けるような白さだが、頬は薔薇色を一滴落としたような健康的な色に染まっており、血色もよい。その不機嫌そうな表情が、本当にオスカーそっくりだ》


◆マデリーン・ディ・クラーク(32)

エヴァンズ男爵夫人。オスカーの親友、正騎士アーサーの妹。

十四歳頃からオスカーに片想いをしており、そのためか、リデルに対して高圧的で嫌がらせじみた言動を繰り返していた。

オスカーがリデルの代わりに夜会へ同伴していたことから、自他共にオスカーの愛人と認められていたが、十二年の空白の間に別の男性と結婚。双子の娘をもうける。

しかし二十九歳の時に夫と死別し未亡人に。夫の先妻の息子が男爵位を継ぎ、それと同時に男爵家を追い出され、行き場を亡くしてアッシェン城へ。

以来、エミリアの家庭教師として礼儀作法や勉強を教えている。

若い頃は常に派手なドレスを身に纏った豊満な美女だったが、現在は喪に服しており、黒いドレスとヴェール付の小さな帽子を被っている。

ちなみにエミリアはマデリーンに対してあまり好感情をもっておらず、その一番の理由としては、父に懸想していること。今のところ、エミリアのその予想に対するマデリーンの真意は明らかになっていない。

《整った眉をはっきりと吊り上げ、榛色の瞳を爛々と怒りに染めている。きっちりと纏め、結い上げられた髪の上に乗った小さなヴェール付き帽子》

《燃えるような赤毛。赤く塗られた唇。簡素な喪服に身を包んでいても、一切失われない華やかな美貌》


◆ミーナ・ディ・オルブライト(32)

リデルの侍女であり、リデルの死後は侍女長としてエミリアに仕えている。

リデルに仕えていた時期は、どちらかというと喜怒哀楽を表に出すタイプであったが、現在は滅多に笑わない女性となった。

十二年前、野盗に襲われた際、リデルの勇気ある行動によって逃げ延びたが、それが原因なのかどうかは未だ不明。

厳格な態度でエミリアに接するが、単に厳しいだけではなく、エミリアへの思いやりが端々から感じられる。

リデルのことは結婚前から「姫さま」と呼んでおり、結婚後もその癖がなかなか抜けなかった。

乗馬が得意。

《リデルの死後もアッシェンに留まり、そのひとり娘の世話を続ける忠義者が、茶色の目を一瞬だけ見開く》


◆ライオネル・ディ・ウォルフォード(37→22)

アッシェン騎士団に所属する正騎士であり、エミリアの護衛。

エミリアには手を焼いているが、オスカーからの信頼は厚い。

いかにも貴公子然といった感じの美丈夫で、物腰柔らか。

《長身で、金髪。目の色こそ違うが、白皙の美貌は少しだけ、前世で従兄だったイーサンを思い出させる。金髪に、明るい緑色の目。騎士というより貴公子という表現のほうが似合う優美な美貌を持つ》


◆ロージー(18)

アッシェン城で働く給仕メイド。

明るく可愛らしい顔立ちをしているが、おっちょこちょいで脳天気。田舎出身で大らか。

同僚やメイド頭のカーソン夫人によく呆れられているが、憎めない性格ゆえに愛されている。

エミリアにとって一番仲のよい使用人でもある。語彙力は少ない。

《小作りの整った顔立ちに、宝石のように輝く緑の瞳。後頭部で括った髪は綿菓子のようにふわふわしており、黄金に薔薇の雫を混ぜたような、赤みがかった金色が特徴的だ。

動いていなければ、名匠の手による骨董人形と見間違えてもおかしくない。花のように愛らしい少女だった》


◆イーサン・ディ・ラングフォード(43)

リデルの、十四歳年上の従兄であり、クレッセン公爵。王太子(リデルの長兄)の補佐をしていた。

身体の弱いリデルを可愛がっており「リル」と愛称で呼ぶほど親しい仲だった。

不幸な結婚をした彼女を心から心配しており、助けを差し伸べようとするも断られる。

リデルが十六歳の折、国王に結婚の許可を求めにいこうとしていたが、オスカーに先を越されてしまった。

金髪に瑠璃色の目。


◆シャーロット(34)

オスカーの異父姉。ナーシーが夫との間に産んだ娘。

ナーシーと同じく栗色の髪に緑の目をしている。

穏やかで子供好き、太陽のように明るく温かい笑顔が特徴的。

貧しい農家の娘で、母がアッシェン城へ洗濯婦として働きに出たきり戻らなかったため、寂しい子供時代を送った。


◆オリヴィア(享年35くらい?)

オスカーの生母にして乳母。

夫がいる身でありながらオスカーの父、先代アッシェン伯により手込めにされ、オスカーを授かる。

本人は決して自身の正体を明かすことなく、あくまで乳母としてオスカーを大切に育てた。

実の娘シャーロットを心から愛しており、離れ離れになってもずっと会いたがっていた。

シャーロットにそっくりな顔立ちの、美しい女性。

病により死去。


◆メアリ・ロス

ジュリエットの侍女。いつも淡々としている。

有能で化粧が得意。紅茶色の癖毛にそばかす顔。青い目。


◆ジュリア(4歳?)

ジュリエットの夢にあらわれた「本来のジュリエット」らしき人物。

夢の中でジュリエットが二人いるという状況による混乱を避けるため、自身を「ジュリア」と呼ぶよう指示し、謎めいた言動でジュリエットを翻弄する。


◆ペネロペ(40代)

マデリーンの侍女。マデリーン至上主義。

眼鏡をかけている。愛称はペニー。


◆アーサー(享年23)

オスカーの数少ない友人のひとりで、正騎士。アッシェン騎士団の副長。

豪商であり準男爵家の長男。妹とは違い、リデルに好意的だった。


◆アダム・ターナー(16)

アッシェン騎士団に所属する準騎士。ジュリエットに一目惚れをし、パーティーに誘う。

心優しく、親切で人のよい青年。

ジュリエットいわく「彼に恋人ができないのは、いい人過ぎてお友達止まりだから」

《くるんと跳ねた鳶色の髪もそばかすの散った顔も愛嬌がある》


◆ローレンス・ラ・シルフィリア(39)

リデルの長兄。王太子。


◆ジョエル・ラ・シルフィリア(15)

ローレンスの嫡子。次期王太子。


◆イヴリン・ラ・シルフィリア(40)

リデルの長姉。二四歳の時、王族の血を引く侯爵を婿に迎え、臣籍に下ることなく結婚した。

リデルと同じく白薔薇を好む。


◆カーソン(60代後半)

アッシェン城に勤めるメイド頭。

職務に忠実でメイドたちを厳しく教育するが、リデルやエミリアにとっては親身になってくれる頼もしい存在。

姿勢がよく、年齢からは想像できないほど矍鑠としている。


◆ザカライア・ベイリー(30代)

エミリアの護衛・正騎士。濃い茶色の巻き毛をしたクマ紳士。


◆スミス(60代前半)

アッシェン城の執事。


◆スーザン(10代後半)

アッシェン城で働く部屋メイド。

マデリーンを信奉しており、彼女が奥方になることを望んでいる。態度が悪く、他のメイドたちからは嫌われている。

にんじん色の髪に浅黒い肌。西方訛りがある。


◆ジェームズ(40)

ジュリエットの父


◆ジョゼフィーン(50代後半)

ジュリエットの祖母。若い頃は社交会の華と呼ばれ、王弟との縁談が持ち上がるほどだった。

どこか浮世離れしていて、少女めいた女性。破天荒かつ周りの人の言うことを聞かないところもあるが、孫思いでおおらか。

恋多き女性で、ロマンチックな話題は三度の飯より好き。


◆アルバート(50代)

先代フォーリンゲン子爵の代から仕える、ジュリエットの家の執事。そんなに出番はない。


◆トーマス・ヘンドリッジ(40代)

ジュリエットの祖母が出資している果樹園の主人であり、祖母の新しい恋人。

黒髭と大きな身体が印象的。

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