第43話 敵の敵は???

「クビになりました」

「それはそれは………よかったですね」

「予想外の返答で驚いてる」


青年魔法使いくんが言う。


「あの王様さ、ちょうわがままじゃん。理不尽きわまりないし思考回路難解で正直疲れるじゃん。自由だよやったね★」

「自分のボスが罵られているのにほぼその通りで同意しかないの辛い」

「なんでしょうこの気持ち。わかった、解せないだ」


胸をおさえながら女性魔法使いがそう漏らした。


「てか平気なんですか?こんなボロカス言ってるのに本当に聞こえないのですか?」


おろおろと心配そうな少女魔法使い。


「大丈夫大丈夫。そこんところちゃんと調整しているから、今なら好きなだけ愚痴とか不平不満言っていいよ」


四人は互いに顔を見合せ、今まで溜まっていた鬱憤を吐き出した。

溜まってるなぁ、口が止まらない止まらない。


店員さんに牛乳を頼んで飲んでいるとようやく愚痴が減ってきた。

出し尽くしたかな?

四人ともスッキリした顔をしている。


「ところでなんで僕を探していたの?用があったんじゃないの?」


落ち着いたところで切り出してみる。


「いや、あの手配書見てな、少し心配で」


まさか騎士に心配される日が来ようとは。

ちょっと感動。

みんなも頷いているし。


そうかこれが雨降って地固まるってことか。

それとも敵の敵は味方かな?どちらにせよ嬉しいぞ。


「僕は大丈夫です。今んところ大したことありませんし」


唯一の被害と言えばグロウやヒウロのクレーム処理くらいかな?でもあれも収まるだろう。元凶排除したしね。


「そうか…」

「なんでちょっと残念そうな顔しているのユーハくん?」

「お前にくん付けされると気持ち悪いからやめろ」

「はいはい」


そう簡単に心は許してくれないか。

まぁ仕方ない仕方ない。


あ、そうだ。


懐から小さいメモ帳を取り出し、魔法陣を描く。


「これどうぞ」


それを全員に配った。


「これは?」

「伝書紙です。手紙を書いて、その紙を手紙の上に置いて僕の名前を伝えれば手紙が僕に届きます。その魔法陣は意図的に破らなければ何度でも使えますので」

「へぇ」

「濡れたりしてもか?」


ユーハが身をのりだし訊ねてくる。


「例え濡れても炙ってもびくともしない。間違えて破っても再生する。便利でしょ?」

「恐ろしいものを持ち歩いているな…」

「そう?」


これしか使い道を思い付かなかったからよくわかんないけど。

元々これは大福とわたあめのメモ帳だし。

すぐにボロボロにするんだよね、あの二人。


「ありがたく使わせてもらう」


いそいそと騎士は紙を仕舞う。

そんな中少女魔法使いは本当かなと紙を燃やして女性魔法使いに叱られてた。

前から思ってたけどすごいなあの子。

好奇心旺盛。


「貴方達はこのあとどうするんですか?」

「私達はこの国から逃げます。どうせ大した戦力もないですし、戦争に巻き込まれたくないですからな。はっはっはっ!」


懸命な判断だ。

ユーハも同じらしい。


「でも何か良い情報でもあれば手紙を送りますよ」

「それはありがたい」


情報はあるに越したことはないからね。


「本当にあの森に居続けるのか?その内お前に戦争を吹っ掛けるぞ」

「お気遣いありがとうユーハくん。大丈夫、奥の手はあるしね」

「??」


みんなには内緒だけど、もう少しで完成するものがある。アレさえ成功すればまたのんびり心穏やかに過ごせるんだ。











それでは、とリウの姿に化けてから別れた。


「…こんな展開は初めてだな」


その調子で良い方向に向かってくれないかな。




みんなの姿が見えなくなってから帰路に着いた。

そういえばマリちゃんが僕に見せるものがあるっていってたっけ。

急がなきゃ!!









家に帰るとマリちゃんが待っててくれていた。


「お帰りなさい、お師匠」

「ただいま」

「ちょっとこっちに来てください」

「?」


マリちゃんに手を引かれて連れていかれる。

どこにいくのだろうか?


風呂場?

え?なんで?


扉を開ける。

すると潮の香り。


「塩風呂作ってみました!血行促進や疲労回復に良いらしいです」

「塩…、あ」


犯人マリちゃんだったのか。


「最近なんだかお師匠疲れているみたいだったので、ライムさんと協力して作ったんです」

「僕のために?」

「はい」


お塩全部使っちゃったのはよくないけど、でも僕のために作ってくれたらしいし。

マリちゃんがニコニコとしている。

それを見るとどうでも良くなった。


「ありがとう。じゃあ入ってみるよ」


マリちゃんが退出し、お風呂に入る。

ジワジワとお湯の温度と塩のびりっとした感触が心地よく、からだの力が抜けていく。

気付いてなかったけど、肩に力が入っていたっぽい。


『どう?マリと頑張ったの…』


ライムがこそりと仕切りの向こうから顔を出す。


「うん。気持ちいいよ」

『良かった。ごゆっくり…』


嬉しそうな顔して消えていった。


「ふう。さーて、明日から本気を出しますかね」



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