第52話 inspired by rally

ある土曜の昼間の事。東名高速道路を私たちの白いパジェロエボと銀色のV87パジェロ、そして黒いポルシェカイエンが連なって快走していた。


ぶっちゃけ私もキャンプはそれほど柄ではないのだが、今回こうして向かっているのには訳があった。話は遡ること一週間前の事・・・・。




先週土曜日の夜。凛子たち御一行は大黒パーキングに車を止めて談笑していた。その中に見慣れぬ黒いボディカラーにオレンジのストライプが眩しい車が一台。そう、莉緒が持ち込んだ二代目ポルシェカイエンだ。なんでも普段乗り回している黄色い991型911を車検&モディファイするためにポルシェディーラーに出しているらしいのだが、その代車としてこのカイエンが貸し出されたんだそう。しかもこのカイエン、ただのカイエンではない。2008年に限定販売された特別仕様車である「トランスシベリア」なのだ。


このトランスシベリアはその名前の由来となった、「トランスシベリアラリー」に参戦したラリー仕様のカイエンをそのまま公道向けにしたようなモデルで、ラリーカー同様のカラーリングと内外装、そしてそれに上級グレードのGTSに搭載されているものと同じ専用チューニングされた405馬力を発揮する自然吸気4.8リッターV8エンジンを搭載し、更にファイナルギアをローギアード化して加速性能を向上させているという、中々玄人好みのモデルだったのだ。私は特にカイエンというかポルシェに対してそこまで関心はなかったのだが、私のパジェロエボと同じようなラリーにゆかりがあるモデルとなれば話は別。とても興味津々に眺めさせてもらっていた。


「へええ・・・中々凝ってるんだねこれ・・・・・。ステアリングのセンターにはマーキング入ってるし、アンダーガード類もガッチリしたのが入ってるし・・・。結構ラリーカーテイストになってるんだねえ。」


「でしょでしょ! あたしもまさかこんなガチガチなの貸してもらえるなんて思わなかったからびっくりしちゃった。『911も作業が暫く長引きそうだから好きに乗り回しちゃっていいですよ~』って言われてるし、借りてから結構乗り回しちゃった。SUV系の車種運転するの初めてだったけど、結構面白くてびっくりしたよ~。アイポイント高くて見晴らしいいし、ティプトロ(※ポルシェのオートマの名称)で運転もしやすいしいい車だなあ・・・って。」


「なるほどねえ・・・。アイポイント高いと状況把握もしやすいから運転がつかれないよねえ。 私もパジェロエボで気に入ってるポイントの一つなのよね。」


「そうそう! この間学会行く時とか長距離乗っても疲れなくてよかったよ~。四駆だから天候悪くなっても安定してるしさ。これは買う人が多いのも頷けるなあと思ったよ。・・・で、まあ後せっかくこういう車だから、オフロード性能は如何様な感じなのかなあ・・・と思って試せそうなところがあるか近辺色々走り回ったんだけど、それが中々なくて・・・・。」


「オフロードねえ・・・。この辺だと、富士が峰オフロードコースとかいいと思うよ。安全性はノーマル車で走れるくらいのとこから、マニア向けのコース取りまで色々あるし。 あと関係ないけど、近くにキャンプ場なんかもあるし遊ぶにもいい場所だよね~。」


キャンプ場の件で莉緒がぴくんっ、と反応した。


「キャンプ場も近いの!? いいなあ。実は最近あたしキャンプやってみたくて色々機材とか揃えてたところだったのよねえ・・・・。もしよかったら、このメンバーで予定が合う日とか・・・どう?」


「いいかもね~!暫く私もオフロードは行ってないし、私もキャンプとか大学の時にやった以来だし、久しぶりにちょっとやってみたいかも。」


続けて涼もこう言った。


「あたしもいいよ~。暫く仕事もないし、大学のコマも暫くないし。」


何やらもじもじしながらも、ユリも続けて


「うーん・・・・正直アウトドアはアタシの苦手分野だけど・・・・。凛子が行くなら。」


「じゃ、決まりね! 後日取りは後日決めようね~」


ウキウキしながら莉緒は答えた。


・・・・で、まあ、こうしていつものメンバー4人でオフロード走行&キャンプを行く運びになった次第だ。(ちなみにユリは今回私のパジェロエボの横乗りである。)


富士が峰オフロードは私も初めて行くところであり、更にクロカン走行するようなコースを走るのは今回が初めてなので、中々ワクワクしていた。


そうこう言ってるうちに、目的の降り口が近づいてきた。いよいよである。


続く。

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