第10話 うっかり(?)から始まるナイトドライブ!?前編
「ぐへええええええ・・・・今日も疲れた・・・・。 早く家帰って酒カスするか。 昨日のうちにお酒をしこたま買ったし。」
今日、私は社内でタレントさん同士が揉めてその始末に追われてクタクタになってしまっていた。 良くも悪くも私たちは変わり者を相手にする仕事なのだから、仕方ないといえばそうなのだけれど。
事務所の地下駐車場に止めてあるパジェロエボに乗り込み、バッグを助手席に放ってエンジンをかける。
キューキャッキャキャというクランキング音と共にパジェロエボの心臓(エンジン)が鼓動を打つ。 ギアを入れクラッチをリリースし、駐車場を出る。 私の家は都内の少し外れたところにあるのだが、そこまでの道のりですら心地よくいられるパジェロエボはやはり素晴らしい車だと思った。 今度はオーディオでも弄ってみようかしら。そんな事を考えてるうちに、自宅アパートの駐車場に着いた。
いつもの駐車場に車を止めた後、さあ、今日は飲むぞ~っと言いながら階段を駆け上がり、自分の部屋の前まできて鍵を出そうと鞄をまさぐっているのだが・・・・・ない。
家の鍵がない。 パニくる私。 なんでだろう・・・・家に出ていく時は確かにあったのに・・・・。 頭を抱えて慌てふためいていた。鞄の中に入れたはずのに・・・・・。 あるとすれば会社の中だろうか。また戻ればいいんだろうけど億劫だなあ・・・・。一瞬莉緒に頼んで私のデスクを見てもらおうか考えたけれど、莉緒はこれから確か収録だったはず。ガックシ。
仕方ないから久しぶりに電車乗って会社の方まで向かうかあ・・・・。そんなことを考えながら、とりあえず私は最寄りの駅まで歩いて向かった。
駅は歩いて5分くらいのところにある。外れの方ではあるが、流石腐っても東京。電車には苦労しないのだ。
駅の近くまで来ると、何やら駅の駐車場に見覚えのある車が止まっていた。チャンピオンシップホワイトで赤いミラーカバーが付いていてADVANのホイールを履いているシビックタイプR。間違いない。ユリの車だ。
早速駆け寄って中を覗くが・・・・・やはりいないらしい。 せっかく見かけたことだし連絡を入れようか悩んだが、流石に厚かましすぎるし、やめとくことにした。
そのまま立ち去ろうとした次の瞬間、おーいと声が聞こえた。 振り返るとそこにはアッシュグレーでストレートのロングヘアー、でスーツを身に纏った小柄な女性がいた。
「ど、どちら様で・・・・」
「あんたねえ・・・・・・。ユリよ!! ま・と・ば・ユ・リ」
と頬を膨らませながらそう言い放った。
あああ~!っと私は目を真ん丸くした。いつもの姿とは全く印象が違ったのだ。なんというか・・・ガキ臭くなく大人っぽい雰囲気になっていた。
「ってかユリはなんでこんなとこ来てたの?」
「なんでって・・・・たまたま会社の会議がこっちであったからよ。あなたこそどうしたのよ・・・・。」
と、ユリが訊ねてきたので、私はこれまでのいきさつを全部話した。するとユリはケラケラ笑いながら
「あははは。 真面目一点張りみたいなあなたもそんな凡ミスみたいなことするのね。 もしよかったらあなたの勤め先まで送ろうか?アタシもちょうど帰るとこだし。」
と言ってきた。
「え、でも家の方向とか大丈夫なの?」
「全然大丈夫よ。貴方の会社新宿の方でしょ? 自慢じゃないけど、アタシの家もそこからすぐなの。」
とちょっと憎たらしい(?)笑顔を浮かべながらそう言った。
うーん、ユリのシビックも少し興味があるし電車で行くより快適そうだし・・・・。よし、決めた。
「えと、じゃあお願いします。」
よし、決まりね。とユリは言った。
私のうっかりから、ちょっとワクワクなナイトドライブが始まった瞬間であった。
続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます