第663話 フランクさんへ報告とモニカさん達
「さすがに、上からじゃわからなかったなぁ。まぁ、少し速めに飛んでいるせいもあるけど」
「近付くのだわ?」
「いや、今はいいよ。ヴェンツェルさん達と合流してからが、本番だからね」
ルジナウムへ向かう途中、ついでだからとアメリさんから聞いていた場所の上空を飛んでもらった。
街道からはそんなに離れていないし、寄り道という程遠い場所じゃないようだったからね、時間にして数分も遅れないだろう。
上空から窺った場所は、オーガが出てきたと言っていた家の事。
詳細な場所は、地図を確認していないからわからないけど、川があると言っていたからとりあえずそれを目標にしてみた。
確かに川は見つかったんだけど、木々が密集していてその合間に水が流れるのが確認できただけで、家までは見られなかった。
まぁ、飛行速度も速めだし、それなりに高い場所を飛んでいて、木の隙間を全て見られるわけではないから、仕方ないよね。
通り過ぎてから引き返し、その場所へ行くかを聞くエルサに断り、素直にルジナウムを目指す事にした。
一応、研究所らしき場所の事や、王都で報告した反応やらヴェンツェルさんが隊を率いて動く事も、伝えておかないといけないからね……姉さんにも頼まれたし。
移動をエルサが担当してくれるため、馬を使った伝令よりも早く連絡できて便利だって言ってた……俺、伝達係かな? ついでだし、フランクさんと話すだけだから別にいいんだけどね。
……姉さんの頼みを断れないなんて、そんな事じゃないはず……よっぽどの事でない限りは断れない自分しか想像できないのは、無視しておいた。
「お腹空いたのだわー!」
「はいはい。昨日も食べたあの店でいいかな?」
「あの店なら満足なのだわ、食べ物全部持ってこーいなのだわー」
「それはお店に迷惑がかかるから、やめような?」
ルジナウムに到着し、お腹が空いたと騒ぎ始めるエルサを宥めて、昨日と同じお店へと向かう。
味も良かったし、あそこならエルサも満足してくれるだろうからね、キューがあれば満足しそうなのは置いておこう。
メニューを見せたら「ここからここまで……」というちょっと憧れる料理の頼み方をしそうなので、迷惑がかからない程度に食べるよう諭す。
金銭的な問題はないけど食べきれないだろうし、お残しはしたくないから……お店の中でエルサが大きくなるのも、迷惑だから……そのうち、一緒にいる人が多い時にでもやってみよう。
「フランクさん、昨日ぶりです」
「リク様。本日はどうされましたか?」
「王都まで行って来たので、報告をしておこうかなと。追加の情報もありますので」
「昨日の今日で王都まで……やはり、ドラゴンに乗れるのは破格ですなぁ。しかし、追加の情報とは?」
誘惑(?)を振り切って昼食を終わらせた後、冒険者ギルドに行ってフランクさんのいる部屋へ。
今日もノイッシュさんは調査で出ているらしく、部屋にはフランクさんと、護衛をしているフィネさんだけだ。
ノイッシュさんはヴェンツェルさんと同じく、事務仕事よりも実務の方が性に合うらしく、ギルドを出る時の表情は晴れ晴れとしていた、と受付の女性から聞いた。
ちなみにコルネリウスさんは、経験のために他の冒険者パーティに混じって、調査をしているらしい。
冒険者パーティにはコルネリウスさんがどういう事をしたのか、フランクさんに報告するようにされており、貴族の息子だからと勝手な事はできないようになっているらしい……厳重だ。
そんな雑談も交えながら、王都でルジナウムやブハギムノングでの事を報告した事や、アメリさんを助けて重要拠点っぽい場所を見つけた事を説明。
それならばフランクさん自身が動いて、フィネさんや兵士を連れて……と言っていたんだけど、王都からヴェンツェルさんが出ると聞いて、任せる事にしたようだ。
さすがに、貴族が動くより、王都のしかも軍のトップが姉さんの命令で動くのは、優先度が高いらしい。
俺もヴェンツェルさんの移動に合わせて合流する事も、フランクさんが退いた理由だったらしいけど……邪魔をしない方が良さそうって言ってたね、別に邪魔とは思わないんだけども。
「それでは、私は作戦に合わせてルジナウム周辺の警戒を致します。調査が終わるまでこの街を離れられませんし、場合によってはあぶりだされたり、焦って行動を起こす者がいるやもしれませんからな」
「はい、わかりました。よろしくお願いします。俺は合流するまでブハギムノングで、エクスブロジオンオーガの捜索をしておきます」
「えぇ、そちらもよろしくお願い致します」
軽くフランクさんと打ち合わせをして、冒険者ギルドを出る。
作戦という程大袈裟な事では……と思ったんだけど、俺はともかく軍のトップが出るんだから、そう言うのもの当然か。
とりあえず、フランクさんと話をするのにノイッシュさんがいなくて良かったと思う。
姉さん達との話でもそうだったけど、俺が関わっている事をあまり知られない方がいいみたいだからね……軍や国と直接っていう意味で。
フランクさんにも言われたんだけど、とりあえずヴェンツェルさんの護衛をする依頼なら、ギリギリセーフだろうとの事だ。
組織や国との関係って、ちょっと面倒だ……。
ちなみに依頼に関しては、王都の方でヒルダさんが手配してくれて、代わりに依頼を受諾する事になっている。
本来、依頼を受けるのは本人かパーティメンバーじゃないといけないんだけど、そこは国からの依頼と約束となってとりあえずはオーケーらしい。
……何度も同じ事をすると不審がられたりするから、あまり使えない手らしいけど。
それと、マティルデさんあたりは俺が直接出向かなかったので、次会った時に何か文句とか言われそうだけど……。
「あれ、リクさん?」
「リクなのー!」
「ほ、こんな所でどうしたのじゃ?」
「爺さん、こんな所ってのは聞き捨てならないぞ? 一応、俺がマスターを務めるギルドの前なんだからな。――で、リクはどうしたんだ? ギルドに用か?」
「あ、皆……」
冒険者ギルドを出たところで、偶然にも調査から帰ってきたらしいモニカさん達に会った。
何も伝えていなかったから、俺がここにいるのを不思議そうにしている。
「ちょっと、王都に行って来たから、その話をフランクさんとね」
「そうなのね。あ、昨日子爵が言ってたっけ」
「……昨日王都へ行くと言っていたのに、今日この場所にいるというのは……理由がわかっていても、よくわからないな」
「エルサがいるから、簡単な事なの。でも、ちょっと遅いの?」
「もう、リクの事ではあまり驚かん自信があるわい。これくらいの事で戸惑っておったら、身が持たんぞ?」
「ははは、まぁ、身が持たないかはともかく……今回は急ぐ事が多くないし、のんびり移動してるんだ。でもユノ、なんでそんなに服が汚れているんだ?」
モニカさん達と話し、首を傾げるユノに答える。
エアラハールさんは大分慣れてくれたのはいいとして、驚かせるつもりで行動しているわけじゃないんだけど……というのは誰も聞いてくれなさそうなので、気にしないでおく。
そんな中、ユノだけは他の人達と違って服が泥だらけになっているのに気付き、訪ねる。
他の人達はパッと見、汚れているように見えないから、ユノだけがちょっと異質に見えるんだよね――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます