第604話 情報を引き出す
白衣の男性は、こんな所にずっといて人と話す機会はあまりなさそうだからなのか、自分のやっている事を誇らしげによく説明してくれるね……身振り手振りまで加えて。
まぁ、自分のやった事を自慢したいという性格なのもあるんだろうけど、このままいい気分にさせて、どういう事をしていたのか聞くのもいいかもしれない。
無理矢理聞き出したり、捕まえて他の場所で聞くよりも、スムーズに情報を得られそうだ。
とは言っても、俺が全て理解できる話かは怪しそうだから、聞き出して覚えておいて、後で他の人に報告するんだけどね。
核に魔力とか、科学者とか研究者っぽい見た目から、専門的な話になりそうだし……アルネだったら、理解できるかな?
とか、打算的な事を考えをしながら、余計な事を言わないようにして、白衣の男性に聞いた。
「それはな……魔物の血液だよ。人間にもあるだろう? 赤いあの血液さ……」
「血液……? 確かに魔物でも血が流れますね。ですがそれが?」
「復元される過程で、魔力を使って少し……そう、ほんの少し血液に影響を与えるんだ。そして、そこに一定の法則を入れる事で、魔物の性質を変える事ができる。……ついでに、一部の人間には襲い掛からないようにもできた。これは、完全に予想外の副産物だったがね? あまり多くの人間を登録する事はできないし、命令を聞く程ではないがね」
「性質を変える……? もしかしてそれで、エクスブロジオンオーガの肌の色が……?」
「おや、知っていたのかな? その通りだ。新しい性質を加えた事で、エクスブロジオンオーガの肌は赤く復元されたのだよ。魔法が使えなくなっていたのは、誤算だったがね」
そういう事だったのか……。
白衣の男性が何かの方法で復元している最中に、影響を与える事で性質を変更。
そこに数人の人間を登録する事で、さっきのように一番近かった男性に襲い掛かったりはせず、離れていた俺やソフィーの方へ来たんだろう。
さらにそれが原因で、赤い肌になったと……つまり、鉱山内にいるエクスブロジオンオーガは、赤い肌をしているのは全部この男性が作ったという事になる。
しかし、傑作と言いながら魔法が使えなくなったという誤算があったり、本当に優秀なのかわからない。
いや、魔物を復元とか、性質を変えるとか、十分凄いと思うけど。
ともあれ、これで赤い方が魔法を使わず、緑の方が魔法を使えた理由がなんとなくわかった。
だとすると……爆発の条件というのも?
「もしかして、その性質を変えるってエクスブロジオンオーガの爆発の事……ですか?」
「ほぉ、中々鋭いな。……そうだ! 私が施した事は、エクスブロジオンオーガの持っている、体を爆発させるという性質に、血液の流れが止まったる事、そして核から放たれる魔力がなくなる事……という条件を加える事なのだよ。おかげで、エクスブロジオンオーガが持っている魔力を全て、そちらに使用する事になり、魔法が使えなくなったようだがね」
「血液と核の魔力……だから、体を斬り離しても爆発するのか……」
楽しそうに、自分の成果を自慢する白衣の男性は子供のようも見えるくらい、無邪気な笑顔だ。
爆発する性質に影響を与えた事で、血液と核からの魔力が止まったら、爆発する……これがエクスブロジオンオーガの爆発する条件だったのか。
そのために魔法が使えなくなってしまたようだけど、代わりに爆発する事を防ぐのが難しくなり、鉱山に影響を与えてしまう可能性を考え、鉱夫さん達に手出しができなくなっていたから、ある意味成功と言えるのかもしれない。
その条件だから、完全に凍らせたら爆発しなかったのか……血液は当然凍っているし、氷で覆われていたら魔力も放てないからね。
多分、溶けた時に爆発するのは、改めて核からの魔力が途切れた事で爆発する……とかかな? よくわからないけど。
「そしてさらに研究を重ねて、改良を加えた事で、爆発の威力を引き上げる事にも成功したぞ! ふふふふふふ……あれが爆発したら、今までのエクスブロジオンオーガと違い、鉱山の一部が吹き飛ぶだろう!!」
威力を引き上げる……どれくらいかはわからないけど、意外に脆い部分もある鉱山内で、それをばくはつさせたら、他のエクスブロジオンオーガを爆発させてしまうより影響が出てしまう可能性が高い。
鉱夫さん達の事を考えると、野放しにはできないし、さっさとそれを排除したいけど……まだ、何か聞き出せる事があるかもしれない……。
というより、ここでこうしている目的は一体なんなんだろう?
「どうして、こんな所でそんな研究を?」
「はん、決まってる! ここがエクスブロジオンオーガの発生地だからだ。正しくは、核の……だがな」
「核の……発生地?」
「調べているという割には、何も知らないのだな。ほら、こいつを見てみろ」
「……?」
いい気分にさせ、調子に乗ってもらって話を聞いているけど、調子に乗り過ぎてこちらを見下すような口ぶりが目立って来たね。
まぁ、俺はわかっててやってるから気にしていないけど、頭にくっ付いているエルサが若干震えているのが気になった。
多分、見下されるのは嫌なんだろう……どちらかというとそれは、ドラゴンであるエルサ側がする事だし。
とりあえずバレないように、落ち着いてもらうため、モフモフを撫でる。
うん、やっぱりモフモフは癒されるなぁ……なんて考えている俺も、男性の口ぶりに少しストレスを感じていたみたいだ。
「ほら、こいつだ……これがエクスブロジオノーガの核になるのだよ。まぁ、もう少し余分な物を取り除く必要があるがね? これ見れば、脳なしな冒険者にもわかるだろう?」
「脳なし……んっと、それに魔力を?」
「あぁそうだ。このガラス管の中は魔力を注入してある。この中に入れておけば、勝手に復元するのだ。そして、このガラスは特殊でな……外から内側の魔力に影響を与える事ができる」
「それで、復元中に性質を変える事が……」
「そういう事だ」
いちいち能なしというのは微妙だけど、男性が足元に転がっていた手の平サイズの石を、拾って地面に投げつけて割る。
割れた破片の中から、男性が真っ黒な石を拾い上げた。
説明されても、よく知らない俺からすると黒曜石のような物……としか見えないけど、実際にそれからエクスブロジオンオーガを復元している男が言っているんだから、本当の事なんだろう。
自信満々でこちらを見下すような口ぶりだし、嘘を教えるような様子には見えないからね。
「でも、こんなところでやっていると、鉱夫さん達に迷惑がかかるんじゃないですか? それこそ、こんな設備を持ち込むより、他の場所でやった方が……?」
「ふん! 鉱山の奴らがどうなったところで知ったところか。あいつら、俺をひょろいだのひ弱だのと……エクスブロジオンオーガの事を調べるためでなければ、働いたりしなかった。この場所でやっているのは、他の場所だと目立つからだが、それで迷惑を被るのなら、願ったり叶ったりだ」
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